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学生時代は毎年毎年ハロウィンのイベントが楽しみで10月31日が待ち遠しかった。
なのに今はこんなにもこの日が憎い。
友人や恋人が居なくなってしまったこの日が。

私はゴドリックの谷にあれから毎年必ずこの日は訪れる。リリーやジェームズの墓石は現実味がなくて、今でも
理解し難いものがある。


「キミも来たのかい?」
「…リーマス」
「やぁなまえ久しぶり」


悪戯仕掛け人と名を馳せた人物は今やリーマスだけだ。あの頃の学生時代は輝かしくて毎年が希望で溢れていた

しかし今のリーマスはその頃よりも顔が痩せこけて目元が落ち窪んでまるで病人のようだ。鳶色の髪も白髪が目
立ち始めている。


「キミもってどういうこと?」


リーマスは手に花束を持ったまま墓石に目を向けた。墓石の前には既に色鮮やかな花束が置かれいる。リリーが
好きな花だ。


「スネイプだよ」
「え?」
「彼はリリーを好いていたからね」


リーマスはしんみりと言った。スネイプがリリーを想っていただなんて初耳だ。


「ジェームズは恋敵なのにわざわざ墓参りに来るだなんてスネイプらしいよ」


リーマスは力無く笑った。


「リーマス、あなた老けたわね」
「キミもね」
「失礼ね」


口角は上がるが笑いは湧き上がらない。表情は死んでしまった。


「キミはまだあの家に?」
「えぇ」
「辛くはないかい?」


シリウスとの思い出が詰まった家。しかし遠い昔にシリウスの物は納戸にしまい込んだ。キャビネットの上の写
真立ても伏せられたまま。


「私は信じないわ、シリウスが犯人だなんて」
「その話は聞き飽きたよ」
「じゃあリーマスは信じられる?ジェームズとシリウスは本当の兄弟のようだったのよ?」
「それも聞き飽きた。僕が信じるかと聞かれたら答えはノーだ」


僕もシリウスがあんなことをするだなんて思わないよ。でも今とやかく言っても仕方ないんだよなまえ。リーマス
は優しく私に言い聞かせた。その声音があまりにも優しくて涙が零れた。


「リーマス、ありがとう」
「どう致しまして」
「本当にありがとう」
「さあさあなまえ、泣いていないで一緒に思い出話でもしようじゃないか」


リーマスは墓石の前に座ると、どこからかバタービールを取り出し笑った。そしてあたかもそこにジェームズや
リリーやシリウスやピーターが居るかのように話し出した。輝かしい希望に溢れた日々の思い出を。



09.10.31
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