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さようなら
さようなら
さようなら
私の愛しい人



「#name#さん、すみません」
「何でなの?」
「幸せに出来なくてすみません」
「レギュラスの馬鹿」


レギュラスは、はいと力無く笑った。
こうなることはレギュラスが死食い人になった時から決まっていたのかもしれない。考えれば分かったことかもしれない。なのに私は何もしなかった。ただその時が幸せならと何もしなかった。嫌なことには蓋をして目を背けてきた。何も出来なかった。何も。


「いやよ、私はいや」
「すみません」
「死ぬだなんて!もっと他に、もっと他に何かいい方法は必ずあるはずよもっと他に」
「嘘、ついててすみません」
「謝ってばっかいないでよぉ…」


嘘とは、きっと此度の計画をギリギリまで言わなかったことだろう。怪しい行動はあっただろうに、私は見事にレギュラスの嘘に踊らされて気付かなかった。
地面にへたり込んだ私に関係なしに話を続けるレギュラス。もっと他にもっと他に、言葉ではそう出るのに思考回路はおかしくなってて何も考えは浮かんでこなかった。


「いやよ!私はレギュラスの婚約者よ?」
「はい」
「婚約者をおいて逝くだなんて」
「すみません」
「そんなこと許されると思ってるの?!」


パシンと乾いた音が響いて、同時にレギュラスの白い陶器のような頬は赤くなった。


「なまえさん…」
「いや!いや、いやいや」
「なまえさん」
「いや、いやいやもう何も聞きたくない!」


そっとレギュラスは腰を落としてへたり込んだ私に近寄り、耳を塞いだ手に自身の手を重ねた。


「聞いて下さい」
「いやよ、何も聞きたくない」
「お願いだから」
「いや!レギュラスなんかどこにでも行けばいいのよ」


レギュラスは諦めたのか重ねていた手を離した。。緩んだ私の手、降りかかる言葉。


「僕は、愛していましたよ」


そしてレギュラスは冷たい唇で口付けた。

そのまま背を向けて歩き始めたレギュラスを止める術を私は知らない。


そしてまた、貴方に恋をするまで



09.10.05
(09.11.01up)
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