main | ナノ





あたしは泳ぎたいなぁ、と先輩は言った。


「今10月ですよ?」


10月ももう後半で、ホグワーツ内はゴースト総出のハロウィンパーティーが間近に迫っていた。
なのに先輩はもしそこに海があったらだなんて素っ頓狂なことを言い出し、挙げ句泳ぎたいとまで言った。


「でもレギュラス、あたしの水着姿見たいでしょ?」
「はっ?!見たくないですよそんなものっ」
「ひどっ!そんなこと言ったら先輩傷付くよ?」


僕の咄嗟に出た返事に先輩は傷付いた(?)のかソファの上に靴を脱いで縮こまってしまった。


「す、すみません…」
「…黒ビキニだよ?」
「だっだから見たくないですってば!」


黒いビキニを来た先輩が海辺に佇んでいる姿が思い浮かんで、頭を振った。僕には少々刺激が強すぎる。


「じゃあレギュラスならどうするの?」
「僕ですか僕なら海の細波でも聞きながら読書します」
「なにそれ!つまんないよ」


潮風はあまり当たりすぎると良くないから程ほどに読書を切り上げなくては、とぽつり考えた。


「まあ、海なんてないんだけどねー」
「来年でいいなら行きますか?」
「えっ!海に?」
「えぇ、確かうちが所有するのが1つ2つあったかと」
「それってプライベートビーチ!?」


確か幼い頃に1度だけ連れて行ってもらった記憶がある。あの時はまだ父も母も健在で、兄であるシリウスと夜まで遊びまわった。今は、あの家族だけの海辺はどうなってるのだろう。
チラッと先輩を見ると、見事に頭の中は海でいっぱいなようで、必要な持ち物をぶつぶつと唱えている。


「その代わり」
「え?」
「黒ビキニ着用ですよ」


僕はそう言い立ち上がり中断したままの、談話室内のハロウィンの飾り付けを再開した。慌てる先輩の声が可笑しくて、久しぶりに声を立てて笑った。
早速手帳に書き記そう。
まだ半年以上先の事なのに、とても待ち遠しく思えた。



09.10.21
(09.10.25up)
突発的浮かんだタイトルから
- ナノ -