レギュラスは毎日こまめに自室の窓際にある鉢植えに少量の水を注ぐ。毎日、毎日少しではあるが必ず忘れたことはない。そんな日が続いて、ようやく蕾が開いた。今までルームメイトにからかわれたりもしたが、レギュラスはそれすら関係なくただただ満足し、感動していた。しかし丹精込めて育てたというのにレギュラスは剪定鋏を持ってくると青々とした茎に歯を当てた。止める人間はいない。
シャキン
と、部屋に音が木霊したと思うとレギュラスは小さな声をあげた。育てていた薔薇の棘が刺さったのだ。ペロリと指を舐め、止まった作業を開始した。丁寧に用意していたラッピング用品を使い包装する。ただ1本の薔薇を。
そしてスリザリンの談話室。男女はじりじりと何を言うでもなく向かい合っていた。
「…何、レギュラス」
「別に」
「じゃあそんなにじっと見詰めないでよ」
レギュラスの同級生であるなまえみょうじは眉間に皺を寄せて怪訝そうにぴしゃりと言った。夕食も近く、何より薄暗く寒いスリザリンの談話室に人は疎らだった。
「…これ、あげる」
「え?」
「別になまえが喜ぶとか思って用意した訳じゃないから」
「レギュラス?」
「そこ、勘違いされたら困る」
レギュラスはそう言うなりぷいと踵を返すと男子寮に向かってずんずん歩いて行った。
ぽかんとしたなまえを置いて。
「ちょっと、レギュラス!」
ピタリと止まる足。それを確認した訳ではないがなまえはタイミングよく紡ぐ。
「ありがとう大事にするよ」
「どうも」
「私レギュラスが薔薇育ててること知ってたから…だから嬉しいよ」
さっきとは打って変わってなまえはニコリと笑顔を浮かべて言った。レギュラスは見事に拍子抜けしたが、瞬時にお喋りなルームメイトを思い出してもう振り返りもせずに早足で男子寮に消えた。
09.10.07
薔薇の花言葉