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七年生になってようやくジェームズの傲慢さが改められて、リリーはジェームズを徐々に受け入れていった。
そんな2人が今日結婚する。


「リリーとっても綺麗ね」
「だな、でもなまえも綺麗だよ」
「あらありがとう、お世辞でも嬉しいわ」
「世辞じゃねーよ」


リリーの控え室にふらりと現れたシリウスは隣に座った。
友人2人が結ばれることが本当に嬉しいようだった。


「シリウス、あなた今日はベストマンでしょ?こんなとこで油を売ってていいの?」
「あぁ、なまえはブライズメイドだろ」
「だからリリーと一緒に居るんじゃない」


イギリスの結婚式では日本と違って仲人をたてない。そこで活躍するのがブライズメイドとベストマン。そしてアッシャー。花嫁入場時ヴェールの裾を持ったり、新婦のお世話をしたりするのがブライズメイド。つまり今日の私。新郎の横でお世話をするのがベストマンは披露宴ではスピーチも行なう。今日のシリウス。ベストマンの補佐的役割のアッシャーは会場の案内係など担当で今日はリーマスとピーターが務める。


「シリウス、あなた失敗しないでね」
「当たり前だろ」
「ふざけたりしちゃダメなのよ」
「大丈夫だ」


リリーは瞬く間に綺麗になって、本当に眩しかった。同性だというのにこんな綺麗なリリーと結婚出来るジェームズが羨ましく思えた。


「いいなぁ」
「結婚が?」
「うん、リリーと結婚出来るなんてジェームズは幸せ者よね」
「そっちかよ」


部屋に掛けられた時計は式開始の時間を刻一刻知らせる。


「普通は花嫁になりたいって思うもんじゃね?」
「じゃあ私が花嫁になる時はシリウスはベストマンを務めてね」
「やだね」


何気なく言ったのに隣のシリウスは真剣な表情できっぱりと言い放った。


「なんでよ、ベストマンいや?」
「あぁ」
「じゃあ何ならしてくれるの?」
「花婿」


時計の音がしなくなったような気がした。正確には何も聞こえない無音のように思えた。


「シリ、ウス…?」
「なまえ、俺と結婚してくれないか?」
「冗談?」
「まさか」


そう言いシリウスは床に跪いて、私の手の甲にキスを落とした。
絵本で読んだ王子様のようなその仕草に胸が高鳴った。


「私と、シリウスってお付き合いしてたっけ?」
「いいや?でもまだ遅くはないだろ?」


シリウスはニヤリと笑うとそう言って退けた。
そしてそのままふわりと私を抱き締めた。

遠くでファンファーレが聞こえる。



09.09.27
(09.09.28up)
あなた達私の控え室で何してるの?
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