姉弟で麻雀 ※ヒロイン姉設定




じゃらじゃらと深夜に似つかわしくない音が二階の部屋からこだまする。
よくお父さんもお母さんも起きてこないなぁと感心する。
姉弟揃っての麻雀なんていつぶりだろう。私がいないとおそ松が点棒総取りで次男はじめ末弟までスッテンテンにされるといった寸法らしい。


「さーて、始めるか。あと2人誰?おそ松以外だと?」
「チョロ松とカラ松かな〜」
「ふーん?お兄ちゃんズで寄って集ってお姉ちゃんを倒そうっていうの?あーこわ。世も末だねぇ」
「姉ちゃん絶対怖がってねぇべ」


兄松たちと私で麻雀卓を囲み洗牌。後ろでは末弟のトド松が、一松と十四松に賭けを持ちかけている。誰に賭ける?なんて愚問なやり取りをしている。
壁牌から牌をそれぞれが取って配牌を作る。手牌を作る時もそうだが、引きの良さは自負している。


「ん、じゃあ起家は私からね。」
「ぜってぇ負けねー。姉ちゃん財布すっからかんになっても知らないよ??」
「そっくりそのままお返しするわ」


東一局起家は私で始まった。もくもくと、ひとつ牌を壁牌から取っては手牌からひとつ捨て、萬子、筒子、索子など様々な牌が行き交う。そんな卓を弟松達が眺める。


「で?トド松誰に賭けたの?」


喋ってる余裕なんて無くなってくるんじゃない姉ちゃん、とおそ松の挑発的な言葉を受け流す。


「え?そりゃもちろん姉さんに決まってるじゃん!」


僕も、と一松と十四松も声を被せた。それって賭けになってないじゃん?そう言おうとした時、リーチぃ!!とおそ松は声高々に言った。


「…へえ、やるじゃんおそ松」
「まあね〜。言ったじゃん姉ちゃんには負けねぇって」
「どうかな?」


ざわっと途端に、カラ松とチョロ松もおそ松の手牌を思案する。慎重に考えて牌を切らないと、おそ松のアタリである牌を間違えて切ったりでもしたら自分だけが痛い目に合わないといけないからだ。東一局でいきなりそんな目にはあいたくない。


「あ、ポン」


カラ松の捨てた發の牌を見て、鳴く。松野家の麻雀は心理戦が大部分を占めていると言っても過言ではない。それでも各々がもくもくと牌を揃えていく。リーチと言ったっきりおそ松は静かだ。


「あ、私もリーチ」


なっ!!!と卓を囲む他の3人が驚きの声を上げた。考えればいい、よーく考えて牌を切らないとね、と含み笑いひとつ。
カラ松みたいに不和了で終わるのは絶対に避けたいし、姉の威厳も保ちたい。引きの良さは健在のようで少しホッとした。


「お姉ちゃんテンパってんねー」
「もうすぐ来そうな気がするんだよねー」
「ふーん?」
「そんなもんだよ、フリテンの暴君十四松くん」


いやぁ〜、なんて後ろ手に頭を掻きながら言う満更でも無い様子の十四松をさておきゲームは進む。しばらく同じように反時計回りで進み、壁牌がだんだんと少なくなってくる。流局か?と誰もが思った矢先、南家のチョロ松が捨てた牌を見て一言。


「ツモ」


げっ、と今度は踏み潰されたカエルの様な声を出して3人は私の手牌を見た。


「ほーら!」
「な、なんだと…緑一色……役満48000点か。フッさすがマイシスター」
「姉さん、相変わらず腕衰えないねぇ」
「うそだうそだうそだ!姉ちゃん絶対イカサマじゃね?なあお前ら見てただろ?!」


カラ松とチョロ松が感嘆の声を上げ、おそ松は子供の駄々っ子のように手足をばたつかせた。もちろん弟松も私がイカサマなんてしてないことを見ていたし、トド松はポンとおそ松の肩を叩いた。


「おそ松兄さん、また次頑張んなよ」
「次ってなぁ、初っ端から役満出されて、姉ちゃんこえーよ」
「だから言ったじゃん、そっくりそのままお返しするって」


その後もムキになったおそ松を筆頭にゲームは続いた…。


「ねぇ、そろそろ寝ない??一松とかトド松寝てんだけど」
「まだまだ!!俺が勝つまでやめない」


そして白んできた東の空に溜息を吐いた。





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「わお!お姉ちゃんあともうちょっとで国士無双だったのにねぇ」
「そうだね、狙いすぎたかな〜」
「満塁からのチェーーーーンジ!ぐらい惜しい」
「あはは確かに」
「(((こ、国士無双だとぉ〜???!)))」



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