何年経っても
久しぶりに喋る椎野くんだけにはじめは緊張したけど、椎野くん自身中身は中学校の頃と全然変わってなくてほっとした。
『椎野くんって彼女が欲しかったの?』
「なんで?突然だね」
少し驚いた顔をしてすぐにクスッと笑う。
唐突すぎたかな。
『友達の彼氏さんが椎野くんの友達なんだよね?』
「ああ、そうだね」
『その彼氏さんが私の友達に椎野くんが誰か紹介してって言ってるから私が行ってくれって言われて』
「ああー…そっか」
なぜか苦笑を漏らして言葉を濁した。
あれ、ちがったかな。
「……まあ欲しいね」
『そっかあ。どんな感じの子がタイプとかあるの?』
「タイプっていうか、やっぱ好きな子が一番のタイプだよ」
『そういえば中学校の時椎野くんモテてたのに全部断ってたよね』
「そうだったっけ?」
『うん。やっぱり部活が一番だったとか?』
「まあ、そういう訳でもないんだけどね。その時はあんま誰かと付き合うとか興味なかったのかな」
椎野くんの言葉を聞き私はそのことをそれ以上聞かなかった。
過去を掘り起こしてもしょうがないしね。
「ちょっと早いけど昼でも食べる?」
『うん』
「あの喫茶店でも入ろうか」
適当に歩いてたからいつの間にか大きな通りに出ていてお店はたくさん並んでいた。
その中の一つの小さな木のつくりの喫茶店に足を運んだ。
店内は見た目と同じくそれほど大きくはなかったけど落ち着いた雰囲気を漂わせていた。
店員さんに案内された席は窓から外が良く見える場所だった。
「ラッキーだったね」
『うん、よく外が見えるね』
「なに食べる?」
椎野くんにメニューを渡され色々とページをめくってみる。
メニューには料理の写真が載せたある。
なんか可愛く撮ってあるなあ。
色遣いが可愛いというか、このナチュラルな感じが可愛いというか。
店内もナチュラルにまとめられていて木造ってところがまたいい。
『ここいいところだね』
「それはよかった」
色々また悩んでしまったけど椎野くんは「悩んでいいよ」と言ってくれたからどうにか決まり注文を頼んだ。
そういえばこの間白石さんとご飯に行った時も待っててくれた。
慌てて決めようとすれば「ゆっくり決めや、時間はあるんやし」と言われ、その優しさに甘えてしまった。
今だって椎野くんがそう言ってくれてまた甘えてるし。
だめだ、私。
人に甘えてばっかり。
「苗字?」
『え?…ああえっと、じゃあこれで』
「了解」
私の注文も一緒に頼んでくれて料理が運ばれるのを待つ。
こうやってさり気なくリードしてくれるところとか、やっぱり女の子はきゅんときちゃうんだろうな。
「苗字はさ、今まで誰かと付き合ったりした?」
『私はそういうの一回もないよ』
「一回も?」
『うん。好きな人もまともに出来たことないし』
「そうなんだ。なんか変わってないね」
『それは椎野くんもだよ』
そんな他愛もない話で静かに笑みが零れる。
その空間がいつの間にか心地が良いとさえ感じた。