お風呂から上がり、髪も乾かしたところで料理の支度に取り組む。

服はびしょびしょにだったから俺のものを貸した。




「君はそこで座っていていいよ」

『…手伝い、ます』


驚いた。


つい先ほどまでまともに喋ってくれなかったのに、自分から手伝うって言ってくれるとは。


そのことが嬉しくなって「じゃあお願いしようかな」と言った。



「野菜の皮はこのピューラーっていう物を使えば簡単に剥けるよ」


今日は簡単にカレーを作ることにした。

一番作りやすいと思うし。





いつもよりかは時間はかかったが無事完成した。


「じゃあ食べようか」


準備ができるとお互いが向きあうような形で座る。



「はい、手を合わせて」


俺の手を見ながら真似をする。



「いただきます」

『い、ただき…ます』




こうすることも彼女は初めてなのかもしれない。

戸惑いながら口にスプーンを運ぶ。



『おいし…い』

「ほんと?よかった。まだ余ってるからいっぱい食べていいよ」




今、初めて彼女の顔を見たかもしれない。

見た限りでは、俺とあまり年は変わらないだろう。







「じゃあ自己紹介でもしようか」

『…?』

「俺は幸村精市」

『ゆ、きむらせー…いち』

「精市って呼んで」

『せーいち…?』

「うんそう、精市。君の名前は?」

『……苗字名前』

「名前だね」



年はいくつ?
17。
それなら一緒だね。
…一緒?
俺も今年で17だから。



なんて会話をする。

最低限の単語だけだけど名前もゆっくりと俺の会話に応えてくれる。






「名前、ご両親はどこにいるんだい?」

『………』


この質問はだめだったか。

俺が質問すると大抵答えてくれるけど、家や両親のことを聞くと俯いたままなにも答えなくなる。


これが彼女なりの答え方なのだろう。



今は言えないことがあって当然か。

なんせ今日会ったばかりなんだから。




「これから住む場所は?」

『な、ない…です』

「そうか。じゃあこの家に住んでいいよ」



そう言うと驚いたように大きな瞳を更に大きく開いた。

予想外の答えだったのか彼女は固まったまま動かない。



「名前はここじゃいや?」


左右に顔を振り俺を見つめる。





『…お願いします』


土下座するような体勢になってお願いをする。

思わず驚きすぐに顔を上げさせる。


女の子にそんな体勢をさせるのはよくない。




「そんなことしなくていいよ。ほら握手」


俺が手を差し伸べれば、その手をじっと見つめ恐る恐る手を出した。


どうぞよろしく


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