めんどくさい。 なんで俺がこんなことせんといけんのんじゃ。 せっかくの滅多にない休日をこんなことに使われるなんて。 「ちょっと雅治、しゃんと歩きなさいよ」 『なんで、おまんなんかにこの休日を使わんといけんのんじゃ』 ほんとだったら苗字さんと一緒に遊園地とか水族館とかそこらのカフェに行って、幸せ一杯の一日にするつもりじゃったのに。 別に誘ってはいなかったがな。 隣におる血のつながった正真正銘の姉を見る。 「あんた今からそんな猫背でいたら、ほんと将来とんでもないことになるわよ」 『余計なお世話じゃ』 「次あそこね」 なんてマイペースな女じゃ。 今日は本当なら彼氏とデートだったらしいが、向こうの都合で予定が飛んだらしく腹いせかなにかで今は買い物に付き合わされている。 はじめは絶対に行かんと否定しておったが、もし彼女ができて買い物に付き合ってって言われた時に何も出来ない男は論外だからと言い放たれた一言でついてきてしまった。 なんともアホじゃ。 だが、もしいつか苗字さんと一緒に買い物に行くときがきたら、何か出来るようにならんといけん。 そうなったときの為の予備練習と思っとけばええ。 「はい、これもね」 とか思っとる内に俺の両手はいつの間にか買い物袋だらけになっとった。 どんだけ買うんじゃ。 重さもそろそろ限界が近い。 『買い過ぎじゃ』 「女の子はこれくらい買うものよ。これくらいで根を上げるなんてだらしない」 自分は悠々と軽そうなカバン一つしか持っとらんけわからんのじゃ。 今頃苗字さんは何しとるんじゃろうか。 家でテレビ見て笑っとるんか。 はたまた、家でも変わらず読書かの。 ああー、会いたい。 こんなに休日が苦しいと思う日が来るとは思わなかったぜよ。 早く学校に行きたい。 『寂しいナリ…』 「誰か好きな子でもいるの?」 『は?』 突然何を言い出すんじゃ。 しかし、見事に図星を突かれて驚きが隠せない。 「あんたに好きな子が出来るなんてねー」 『なんじゃ』 「別にー。でも、よそ見なんかするんじゃないわよ」 『そんなもん当然じゃ』 「女の子はね繊細なの。ちょっとしたことで不安になったり、嬉しくなったり、泣きそうになったり」 繊細…か。 一応女の姉貴が言うんだから苗字さんももしかしたらそうなのかもしれん。 「なんでか知らないけど、男ってそういう女の子の気持ちちっともわからないのよね。気付かないケースの方が多いのよ、ほんとむかつくわ!」 彼氏のことを思い出したのかまた足を速めて買い物に没頭し始めた。 なぜかそのときの言葉が頭にすごく響いてきた。 俺は、苗字さんを不安なんかにさせん。 不安になったらすぐにそんなもん消しちゃる。 じゃけ苗字さん、俺だけを見てくれんかの。 姉の教えもたまにアリ 《あと女の子に貢ぐ男はモテるわよ》 《おまんの趣味なんか聞いとらん》 |