「じゃ、名前また明日ー」

『うん、ばいばい』


今日も特に何もせず時間は過ぎていった。

なんか時間の使い方勿体ないな。
今は今しかないのに。


今は、今しかないのに…。


そうだよ、今は今しかない。
明日は明日しかない。
昨日はもう戻って来ない。

何してるんだろう私。


こんなことしてる場合じゃないよ。


今、誰よりも一番会いたい人がいる。

今、誰よりも一番傍にいてほしい人がいる。

今、誰よりも一番傍にいたい人がいる。


今できることは今しないと。

もしかしたら明日はできないかもしれない。





幸村先輩に会いに行こう。



そう思い教室の外に出ると、女の人が立っていた。
隣を通り抜けようとすれば「待って」と言われた。


この人、この前幸村先輩と一緒にいた人だ。




『あの…?』

「あなたが苗字名前さんだよね?」

『…はい』

「ちょっと話があるんだけど今大丈夫かな?」


どこに行くのかと思えばここで大丈夫だと言われ動き出そうとしていた足を直す。



「率直に言うね。あたし幸村くんと同じクラスの橋本まりあって言うんだけどー、あたしと幸村くん付き合ってるの」


やっぱり付き合ってたんだ。

そうだろうとは思っていながらどこかで、もしかしたら…なんて期待していた自分がいた。

だから余計ショックは大きい。




「それで幸村くんから聞いたんだけど、苗字さんと幸村くん今図書室でお昼にお勉強してるんでしょ?それ、やめてもらえないかなあ?」


たしかに彼女さんがいてその彼女の橋本先輩の立場からしたら、彼氏がお昼に他の女に会うのなんて嫌に決まってる。

当たり前だよ。


私に否定できる権利なんてないのに。

そんなにわかりきっているのに、どうしても頷くことができない。


「幸村くんもすごく迷惑がってたしい…。だから幸村くんの為にもお昼のそれ、やめてよ」


幸村先輩も迷惑がってた…。

そう言われたらもう言い返す言葉なんて私にはない。


幸村先輩に迷惑をかけることなんて私にはできない。






『……わ、かりました…』

「ふふ、わかってもらえたならいいの。それじゃあねー」


私の返事を聞くなり上機嫌で帰って行った橋本先輩。

橋本先輩が去った後力が抜けたかのようにその場にへたり込んだ。
じわじわと涙腺にが熱くなっているのを感じる。



『いや、だ…っゆ、きむらせんぱっ…い…』





私のこの恋は叶わない恋でした。

なのに、素直に諦めることがどうしてもできないんです。






『…っすき…って…辛いな、あ…』



零れ落ちないように目を固く瞑っても、頬を伝って床へ静かに落ちて行く。







初めて知った恋の味は
(しょっぱくて苦みばかりを残していった)