小さな恋心


小学生の時私は大阪にいた。





小学生のときは休憩時間になる度外に出て遊んでいた。

みんな外で縄跳びやおにごっこやかくれんぼ、私も仲が良い子と一緒に外で遊んでいた。


その日はおにごっこをしていて私は逃げる側だった。

おにの子は必死に追いかけて私たちは必死に逃げる。


おにの子のターゲットはいつの間にか私になっていた。
その頃からあまり走るのが得意じゃない私は遅いながらも必死に逃げていた。
必死だったあまり周りが見えなくなっていて目の前にあった小さな段差に躓いて思いっきり前のめりで転んでしまった。


一生懸命走っていたからその分怪我もひどくて、膝の皮を擦り剥いていた。
あまりの痛さに涙がポロポロと私の頬を伝う。


みんな駆け寄って来てくれて私を保健室まで運んでくれようとしたけど、なんだか恥ずかしかったので一人で行くと言って一人で保健室に向かった。


タイミング悪く先生は外出中でその代わりに男の子が一人いた。
綺麗なミルクティー色に染まった髪の毛の男の子。



「どないしたん?」

『走っとった、ら…っ…転んだ…』

「思いっきり剥けとるわ。ちょっと待っといてな」


男の子はたくさんトレーの中や棚に並べてある薬を探り何個か手に持つと私の傍に再び戻って来た。


「まずは水で洗い流すで。歩ける?」

『…は、い…っ』


男の子に支えられながら蛇口まで行き膝についている砂を水で洗い流す。
水が怪我に滲みてすごく痛かったけど歯を食いしばって我慢した。


「ほな消毒するで」

『…っ……』

「ん。よう頑張ったな」


男の子はにこっと笑い膝に大きめの絆創膏を貼ってくれた。



「お風呂んときは痛いけどこれ剥がして入るんやで?」

『…はい』



その男の子にお礼を言うと保健室を出てみんなの元に戻った。


それから校舎でその男の子とすれ違う度に目で追っていた。


休憩時間になるとその男の子はいつもグラウンドで友達と走り回っていたから、私は友達と遊びながらもその男の子に意識を向けていた。



日を重ねていくうちに私の中には小さな恋心が芽生えていた。



そんなとき、突然の親の転勤が決まり私は東京へ引っ越すことになった。

まだ名前も学年も知らないまま、私はその男の子と離れた。





それから何年もの時が経ち再び大阪に戻って来た。

一度東京に行ったことで関西弁ではなく標準語が身についていた。



四天宝寺高校に転入して何ヶ月か経ったある日。
あのときのミルクティー色の髪の男の人と廊下ですれ違った。
反射的に私は振り向きその人を見つめた。

うしろ姿だったから顔は見えなかったけど、それから何度か同じような境遇に遭い顔も見ることができて間違いないと思った。



背丈はあの頃とは随分変わっていて顔立ちも幾分も大人っぽくなっていた。




もうあの日から逢えないと思っていた彼にもう一度巡り逢えた。




その奇跡に溢れだした想いが涙に変わって頬を伝ったのを今でも覚えている。

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