同じソファー


家に帰ってまずお母さんに友達の家に泊まってくると言い許可をもらった。
さすがに男の先輩の家に泊まるとは言えなかったけど、あながち嘘は言ってないよね。

着替えや洗面道具や歯ブラシなど一通りのものをカバンに詰め込んで怜ちゃんと再び合流する。


白石先輩の家に着けば白石先輩と忍足先輩が迎えてくれた。


「ほな寝るとこは俺の部屋やったら相当狭いと思うさかい、リビングで寝るか」

「なんやわくわくするなー!修学旅行来たみたいや!」


落ち着いた白石先輩とは対照的に目をきらきらと輝かせながら満面の笑みを浮かべている忍足先輩。
上がりっぱなしのテンションのまま怜ちゃんに抱きつけば、見事に顔面パンチを食らっていた。


…今のはどっちもどっちだと思う。


時間は経つのが早くて気がつけば夕方の6時前。

さっきお昼食べた気がするのにもうこんなに時間が経ってたんだ。


「なんやもうこないな時間か」

「お、ほんまや。夕食どうするん?」


うーん、と少し考えるための間が空く。

そんなときポケットに入れていた携帯から着信音が流れ始めた。


あれ、誰だろ。




ディスプレイに表示されていた名前は財前光。

財前くん?
珍しいな、と思いながら受信ボックスを開いた。






≪白玉ぜんざい近所のおばさんがめっちゃくれた。めっちゃ食べた。めっちゃ腹いっぱい≫





え…。

…そっか、うん。


なんて返事をしたらいいんだろう…。

というより、財前くんは何を私に求めているんだろう…。


とりあえず≪すごいね。よかったね。幸せだね。≫と自分でもよくわからない返事をしておいた。


「ほな、行って来るわー」

『え?忍足先輩たち、どこに行くんですか?』

「あたしらで適当に夕食買ってくるさかい、名前は白石先輩と留守番しとき」

『あ、うん。わかった』


いってきまーす、と言う二人に手を振って見送った。



静まり返る家の中。

あ、そういえば今私と白石先輩だけなんだっけ。

ってことは白石先輩と二人きり?





えええ!!
どうしよう、よく考えたらどうしよう。


心の中でパニック状態に陥る。


「苗字さんそんなところに立っとかんと座りや」


ソファーをポンポンと叩く。
しかも白石先輩の隣。


そこに座ってほんとにいいのだろうかという疑問は浮かんだけど、白石先輩が言うんだからいいんだよねと自分で勝手な解釈をして座らせてもらった。


だけど座って後悔。




ソファーで隣同士ってこんなに近いんだ。
白石先輩は背もたれにもたれて座り、何故か私はものすごく姿勢よく座っている。

そのおかげで視界に白石先輩が入ることはないけど、隣にいるって思うだけで心臓が忙しくなる。


この空間は幸せだけど、それ以上に恥ずかし過ぎる、そして気まずすぎる。




早く帰って来て怜ちゃんと忍足先輩…!


とにかくひたすら願うばかりだった。

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