morningダッシュ
夜がやってきたら当然ながら朝もやってくる。
昨日は早く寝たからかなんだか目覚めがいい。
寝ていた間で固まっていた体をほぐすように腕を上に上げる。
時間にも余裕があったのでいつものように慌てることなく朝の支度をする。
顔を洗い歯も磨いて鏡の前で自分を見る。
『髪伸びたなあー』
見ない内にいつの間にか伸びていた髪を見てふいに呟く。
今日は時間もあるし結んで行こうかな。
髪の毛にくしを通して前髪に編み込みをして分け目とは反対の耳の辺りに編み込みした髪を流してピンで止める。
これだけでも随分と印象が変わるんだなーなんて感心する。
時計を見てみればまだ7時前。
まだまだ時間に余裕がある。
今日はいつももよりもかなり早めだけど特にすることもなかったので、『いってきまーす』と言いお母さんから返事が返ってきたのを聞くと家から出た。
空を見上げれば天気もいい。
こういう朝って好きだな。
心に余裕が持てる。
『ふふ』
今日も白石先輩と会える、そう思っただけで更に気持ちは高まっていく。
「朝から一人でにやけるとかドン引きや」
すぐうしろから聞こえた無愛想な低い声。
振り返ればまだ眠たそうな財前くん。
『あ、財前くん。おはよう』
「はよ」
挨拶を言い終わると同時に軽く欠伸をしている。
『眠いの?』
「ん。朝早よ起きるんほんま嫌気がさすわ」
『ああ、そっか。テニス部だもんね』
試験週間なのに部活あるんだ。
やっぱり全国優勝を目指す部活はそれくらいやらないとだめなんだろうね。
『試験週間も部活って大変だね』
「朝練しかあらへんけどな」
『放課後は?』
「試験週間は休み」
財前くんがテニス部って聞いたときはものすごく衝撃を受けたのを今でも覚えている。
絶対に口が裂けても言えないけど、財前くんって見た目的に“部活かったりー”とか言ってそうな雰囲気だったから、まさか四天宝寺一ハードなテニス部に入っているとはね。
驚いても仕方ないと思う。
『それで朝練は何時から?』
「7時」
7時?
今の時刻を腕時計で確かめる。
『………え!?ちょ、ちょっと財前くんもう7時とっくに過ぎてるよ!?』
だってよく考えてみれば私が家に出たのが7時前だったんだからもう7時は過ぎてるよ。
慌てる私に対して当の本人財前くんはと言うと「おん」と言うだけで焦りも走りもしない。
どこまでマイペースなんだろう。
じゃなくて!
『財前くん急がないと!』
「もう遅れてんねから走ったってしゃあないやろ」
『しゃあなくない!少しでも早く部活に行かないと』
「……それに遅刻今日が初めてとちゃうし」
『だったら尚更だよ!やるって決めたなら中途半端にやっちゃいけないよ!みんな頑張ってるんだから』
私は財前くんの腕を掴んで全力で学校に向かう。
と言っても当然帰宅部の私の全力なんて高が知れててすぐに息切れをする。
財前くんはそんな私を見て楽しんでいるのか「早よ引っ張らな部活遅れるわ〜」とか言っていた。
そんなこと言うなら一人で走って行きなよ!と思ったものの口には出せず、死に物狂いで財前くんを引っ張った。