心と思いは反比例


ガリガリといつもよりも更に耳につくような気がするのは何故だろう。

まあきっとあれだ、うん。


今日から試験週間に入る。

はあー、もう小学校から何度もやって来たテスト。
だけど未だに慣れない。
慣れるどころか歳を重ねるたびにどんどんレベルが上がっていく。
当たり前の話なんだけど、それでもぐちぐち言っちゃう自分はまだまだ幼い証。


そういうわけで今は自習の時間なんだけど、みんな机に向きあって真面目にやってる。

私も一応教科書とノートを出したりタイサクプリントを出したりしてるけど一向に進まない。

昨日白石先輩と話したっていう事実を思い出しては顔が赤くなる、その繰り返し。


ちらり、と隣の財前くんを見てみた。

相変わらず携帯を片手に暇そうにしている。


「なんやねん」

『えっ…あ、な、なんでも…』


気付かれた。
ちょっと、いやかなりびっくりした…。

あれだけいつも騒がれているからもう人の視線には慣れているのかと思ったけど、そうでもないんだね。


「こない机の上散らかしといて一向に進んでへんやん」


財前くんの視線を追うとプリントやら教科書やらノートとかが散らかってる私の机。

指摘されたことに恥ずかしくなり手遅れだけど急いで腕や手で隠す。


『財前くんこそ、なにもやってない』

「気が向いたらやる」

『そっか』

「…自分、さっきからずっとぼけとるやん」

『私?』

「おん」


ぼけてたっけ?


『別にツッコミいれられるようなことは何も言ってないんだけど』

「ちゃうわ。ずっとぼけっとしとるっちゅう意味」

『そっちか』


そこから会話は途切れた。
かと言ってどちらかがもう一度口を開く訳でもなく気付けばチャイムが鳴っていた。

チャイムが鳴り終わるとほぼ同時に教室のドアが開いた。

「財前」


その人物を見た瞬間一斉に教室がざわめき出した。
一部の女の子たちはキャーッと驚きのあまり叫んでる子もいた。


「ほんまあの人自分が目立っとる自覚あるんかいな」

ぼそっと呟きながら席を立ち白石先輩の方へ向かった。

声には出ないものの、私も白石先輩を見て驚いた一人。
こうやって改めて白石先輩を見ればやっぱり私とは全然釣り合わない人なんだと嫌な程思い知らされる。

白石先輩と二人で話したときのことが夢だったのかもしれないとさえ思えてしまう。






切ない。

わかってるのに。

遠い。

わかってるのに。




どうしてこんなになにかを求めているの。


どうしてこんなに泣きそうになっているの。





耐え切れずそっと白石先輩から目を逸らした。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -