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夢を見た


遠い昔の思い出


すごく懐かしくて、なんだか恥ずかしくなってしまった


蔵はあの日のことを覚えているのだろうか








ある日蔵が私の家にいつものように遊びに来た時のこと


私は確か8歳、蔵は10歳の頃である


私と蔵は近くにある公園でテニスをして遊んでいた



私も一応ラケットを持っていたのだが、蔵のラケットは私のラケットとは格段に違う高いものであった




そのラケットは自分のとは違い、軽くて私の小さい体にはあまり負担にならなかった



そのせいか蔵は気を使ってくれていつもラケットを貸してくれた



だけどラケットを交換しても蔵には全く敵わなかった




「やっぱり蔵すごい!」



1ゲームが終わり、結果は蔵の圧勝だった


ネットに近寄りながらそう言うと蔵も近づいてきた


そして私の前に立つとニカっとまぶしい笑顔で微笑んだ



「自分もえらい上手くなっとるやん!」



「ほんと?」


「おー、俺には勝たれへんけどなー」



蔵は冗談交じりに笑った



私もつられて笑う



「蔵絶対プロの選手になれるよ!!」


「ほんまか?…せや、なまえのためにならなれるかもしれんな」



そう言った蔵の顔は真剣だった




「私のために?」



「そや。…代わりになまえは俺のために誰よりもいい女になってくれへん?」



あの頃はこの言葉の意味を理解してはいなかった



だから私は承諾した




「こっち来いや」



蔵は私の腕をひっぱった



私は少しよろけながら上半身だけ蔵のコートに入った



そして頬に柔らかい感触がした


私の心臓が高鳴った



小さな私でも一瞬で分かった


今頬に触れているものが蔵の唇だということも

蔵の決意も




そして腕が放されもとの体制に戻って蔵を見た



蔵は顔を真っ赤にしていた



私もつられて真っ赤になった



「約束やで」


蔵は小指を差し出し、私も同じように小指を差し出し指きりげんまんをした







ねぇ、蔵



蔵はあの頃より格段にテニスが上手くなってプロに近づいてるけど



私約束守れてる?










目を開けると眩しい朝日が私を照らしていた



窓の外を見ると、数羽の小鳥が気持ちよさそうに飛び交っていた



うん、いい天気


ベットから出て背伸びをした




支度を済ませて早く蔵に会いに行こう







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