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生意気な奴、



第一印象はそんな感じだった




まさかこの俺様があんな女に逆らわれて、タメ口聞かれるとはな



終いには殴られるときた



あの女は俺様の価値がわかっていないんだ




そう思って部活仲間であり友でもある忍足侑士に、あの女に俺様の価値観を分からしてこいとアルバムとメモ帳を渡した



忍足の野郎は何を思ったのか笑い出し、ただ一言"ええよ"と言った



結果、忍足は失敗した



あいつはかなり手ごわいようだった



今まで擦り寄ってきた女とはまた違う、たちの悪い女




後日試しに忍足にあの女に感想を書かせてこいと原稿用紙と参考にとアルバムを手渡した




忍足はまた笑った


そして前回とは違うことを口にした



"あの子変わったこやなぁ。跡部がハマる意味が分かったわ。"





またいつもの冗談だと思いスルーをした



だが、一つだけつっかかった



俺様があんなバカ女にハマった?



ばか言え。あんなのよりもっといい女は山ほどいる。



ただの勘違いだろう。





しばらくして忍足は帰ってきて妙なことを言った



写真をくれと言われたと言われたこと。

俺様の出現場所を聞かれたこと。



あの女、何か企んでやがるな。


直感でそう感じた。








長い長い午前の授業が終わり、いつも通り屋上で忍足などの部活の三年レギュラー達でメシを食いにいこうとした




だが、宍戸が弁当を忘れ購買で何か買うから遅れるということになった



最初は宍戸だけが遅れるはずが、それに便乗し向日達も買っていくことになった





結局、忍足と2人で先に屋上に向かった





ドアを開けいつもの場所に行こうとした



だが、いつもとは違う異様な光景が広がっていた





・…あの女だ



忍足も気づいたらしく声をかけた


振り向いたもののすぐに前を向いた



何やら目の前に新聞紙をちぎった紙くずが山盛りになっている



微かだが、火がついているようだ




放火、




そんな嫌な言葉が頭の中を横切った





急いで立っている地点とは真逆にある水道に向かった


そして真横にあったバケツに水をいっぱいに入れた



そのバケツを持ちながら奴らのもとへ走った




そしてあの女ごと火に水をかけた



多少嫌味が入っていた


あいつはタイミングよくこちらを向き顔から水がかかった



笑いそうになったが堪えた



あいつは目をまん丸にしてこちらを見ていた


忍足もびっくりしてこちらをみていた



目をまん丸にしたいのはこっちだ


生徒会長として見逃すわけにはいかない



「…何してんだ、テメーは!!」



ビビらせるつもりで大声で怒鳴ってみた



だが、やはり期待通りにはいかなかった



「…こっちのせりふだよ、あほ」


奴は表情を変え冷たい口調で言った



「火事なんかおこしてどうするつもりだ」



そんな質問をしてみれば



「火事にしようとしてない、焚き火」



とんちんかんな答えが返ってきた




そしてあるものを目にした


それを手に取りあいつの前に突き出し問い掛けた



「…何の嫌がらせだ?これは」



奴は黙ったまま憎たらしい顔で微笑んで言った


「諸々の嫌がらせ」




「ごめんなさいって謝れば許してやる」




「もう私行くから」




謝らないのは確実だった


「あーん?逃げんのか?」


だが、逃げられると思わなかった


だからわざと挑発する言葉を発した



「うるさい、ストーカー」



なのに奴は軽くかわし俺の横を駆け抜けていった



それが面白くて、新鮮で、笑みがこぼれた





奴が屋上を出て行った後、忍足は笑いながら言った




「跡部珍しく怒ってないやん」





「あんな珍しい女初めてだ。扱いがわかんねぇ」




それは本心。


口に出すつもりは無かったが、つい出てしまった





「…タイプだったりするん?」



さっきよりも怪しく微笑み忍足は言った




「ありえねぇだろ」




自分のなかでもう一度確認しかけたが、止めた



そうだ、そんな必要はねぇ




「ただの生意気でムカつく女だ」





生意気な女、



第一印象のままだ



そう思った








生意気な奴から生意気な女に変わったことも意味も



気づかぬまま














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