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「可愛いなまえのために奮発したったんや、大事に使いーや」




私の前に差し出された紙袋



「何これ?」



私は目の前に出された紙袋を興味津々に見た



「中学入学祝いに決まっとるやん。中見てみい。」



そう言われ中を見てみる



中には今年の春に新モデルとして発売されたピンクのかわいい折りたたみ式携帯が入っていた


思わず笑みがこぼれた




「・・蔵ありがとう!」



私が飛び切りの笑顔を彼に向けると彼も笑顔で返してくれた



「可愛い従兄妹(いとこ)のためや。何でもしたるで。」



そう言って彼は私の頭をくしゃっと撫でた



「ほんま可愛ええな」
























騒がしく鳴りつづける目覚まし時計に起こされ私の一日が始まる





「ふぁあー…眠い」




布団の中から手を伸ばし目覚ましのスイッチを切る


途端に静寂が広がる



六月は雨が降りつづけてジメジメしていて憂鬱、というイメージがあるがまだ春のような天候だ



二度寝しちゃおうかな、なんて容易に考えてしまうぐらいぽかぽかしていて心地よい




その時だった



「んー・…?」



枕もとに置いてあるピンクの携帯がブルブルと震え着信音が鳴った



私は携帯を手にして画面をみる



そしてプッシュボタンを押し耳元に携帯を構えた



「もしもし、」



『・…はよ起きぃや。声寝てるで』




電話の主は従兄妹の蔵ノ介だった


蔵は大阪にいて私は東京


年に二・三回しか顔を合わせないが、妹のように可愛がってくれる


「蔵は相当暇なんだね」



よく電話はするけど、こんなに早くに電話してくることは今まで無かった



『頭フル回転してみい。朝練ある俺が暇なわけ無いやん。今休憩やから暇やけどな。』



「だから息上がってるんだ。ピーッな電話かと思った」




『なんでやねん!!んなことするか』



異様に焦る蔵。思わず笑い声がこぼれる。



「それで朝からどうしたの?」


『すごい話題の変わり様やな。
えーっとな。今週末テニスでな、そっちいくねん』



「ほんとに?家にくるの?」


私の心が少しだけ踊った




『あー…残念ながらそのまま帰るんやけどな・・」



「…そっか」



久しぶりに蔵と夜通しで遊びたいと思ったけど、それは又今度にお預けになってしまった



『なまえ通ってんのは氷帝やろ?そこで練習試合すんねん」




「じゃあ応援行く!」




氷帝の生徒のくせに他校を応援するのはどうかと思うけど、氷帝のテニス部はいつもギャラリーいらないほどいるから大丈夫、だとおもう



『言うと思ったわ。ちゃんと応援してくれんやろな〜?』



「するする!」



その後試合の日程を詳しく聞き電話を切った


蔵は土曜日に来るらしい。

土曜日って事は今日月曜日だから後五日か

蔵と会うのはだいぶ久しぶりになる

今から少し緊張してきた





時刻を見ると15分オーバー


げ。やばい。




急いで身支度をし朝食を詰め込み、制服に着替えた



氷帝、と刻まれたブレザーのワッペンを見るたびに蔵の通っている四天宝寺中に行きたかったなー、なんて思う



蔵は一個違いだけどすごく大人びてて、テニス部の部長をやっている


更には頭脳明晰で、優しくておもしろくて


最終オプションには顔がすごく良い、いわゆるイケメンが付いてくる。モテるのは当然。


だけど蔵はどんなに顔が良くて性格が良い子から告白を受けても断ってしまう


いつも"部員とテニスの方が大切やねん"と言って断るらしい。


わたしはそのいとこなのに面白いほどモテない。どんだけ不平等かと言いたくなるほどモテない。モテを分けろやコラ。




そんなことを考えながら家を飛び出し、早歩きで学校に向かった



学校へは徒歩約15分で着く


見慣れた道はすごく退屈で、いつも携帯を葬りながら歩いている



今日も同じように携帯を開いた






校門が見えてきた頃、私はいまだ携帯をいじっていた




まわりにはちらほら生徒が歩いていた




自転車を漕いでる人、友人としゃべりながら歩いてる人と様々だ






私は目の前にいた少し歩くのが遅い子を追い越そうと少し脇によって追い越した



その時だった



私のスレスレを車が通り、思わず持っていた携帯を放り投げ、尻餅をついてしまった



「あっ・・!」



携帯は道路の真ん中あたりに落ちていた


私は早く拾わなければ、と身を乗り出し手を伸ばした




が、




視界は黒に染められた



瞬時に切り替わり先ほどの風景になった



一つだけ違うといえば




「……ああああああ!?うそ!?」



無残に真ん中から二つに割れコードが露になった携帯






壊れた原因はすぐ分かった


私は遠ざかるものの未だはっきりと見える黒い高級そうな車を睨み付けた



ナンバーは"2580"




私は壊れた携帯を手にし、決意した










殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す..(略)






初めてこんなに人を恨んだ中二の梅雨







私は殺意に満ちた足取りで学校に向かった



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