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くだらない


本当にくだらない



「ちゃんと聞いとるん?怒られんのは俺なんやからなー。」


目の前で聞きたくも無い情報を提供する眼鏡変質者こと、忍足侑士。


口を開いたと思えば突然自己紹介をし、自分の使命を話し始め実行した


彼曰く、"跡部景吾"とよばれるボンボンの坊ちゃんに私に生い立ちや成長の経緯を説明するように仰せ付かったらしい


どんだけ暇なんだ

というより跡部景吾ってだれ


「そんでな、跡部は三歳のころに」


「もういやだ。」



私は跡部というどこの誰かも知らない奴の、0歳からのエピソードを延々と聞かされている

三歳までたどり着くのに十分はかかった



「そんなこと言わんといてやー。せや、写真もあんで」



彼は紙袋の中からアルバム状の本を取り出した


机の上にそれを置き広げた


中にはまだ3歳くらいの少年の写真が沢山はっつけてあった

ページか進むにつれ彼もまた大きくなっている


なんかこの生意気そうな三歳児見たことある顔だな



眼鏡変質者こと、忍足侑士はある一枚の写真を指差した



それは6歳小学校入学式と説明書きがしてある写真だった



「この頃にはな、もうあの口癖が出てたんやって、ぷぷ」



眼鏡変質者こと、忍足侑士は口元を緩めた




「口癖?」


どうやらこの人は私が彼のことを知っているのだと勘違いしているようだ


「自分聞いたことあらへんの?特別に教えたる。…あいつの口癖はな、"あーん?"なんやで。笑えるやろ。」



え、すごい聞いたことあるフレーズ


というよりすごく笑った記憶のあるフレーズ



跡部景吾ってまさかあの…



「全然笑えますね。ははは。さ、帰って下さい」



私は関わってたまるもんかと適当にあしらった



「ちょ、そんな冷めた笑い方あるかいな!まだ三歳までしかいっとらん!」



「何歳まで説明する気ですか」



「18歳」


「却下」


私は席を立ち、彼の腕を掴んだ

そしてええやん、ええやんとしつこく言う彼を無理矢理教室から追い出した




「なんか一気に苦労人みたいになったね」


葵が同情の目を向ける




「ほんと散々。携帯も使えないし、変な人に絡まれるし」


「ねぇみょうじさん!忍足先輩とどんな関係なの?」


私がため息を履くのと同時にクラスメートの女子数人に話し掛けられた



「え?」


突然で驚嘆の声をあげた

彼女らはすかさず話し出した



「忍足先輩と言えばこの学校のイケメンランキング3に入るほどのお方よ!」

ある子は手を組みやや斜め上を見てそう言う

…そんなくだらないランキングあるんだ。



「あのフェロモンのあるポーカーフェイスの中に眠る美顔!美顔の中に眠るすっと伸びた鼻、そして切れ長の瞳!そして切れ長の瞳に眠る情熱!」

ある子は赤く染まった頬に両手を添えそう言う

…どんだけ眠ってるんだよ。秘めすぎだろ。



「あの忍足先輩がこの椅子に座っただなんて嘘みたーい!!」

ある子は、変質者が座った椅子に頬を当て摩る

…気持ち悪いな。大丈夫かアンタ。




「多分人違いっぽかったし、何も関係ないよ」



葵がめんどくさそうに言った



「人違いでもうらやましいーっ!」


彼女たちは口をそろえてそう言った

でも例外もいた


「で、でも私忍足先輩も好きだけど…跡部先輩のほうが好きかも」


ああきっとこの子は変な菌にやられてしまったんだ


直感でそう感じた


だっておかしいもの


あんなひねくれた俺様の介護なんて誰が進んでやりたがるのさ


そこらのおじいちゃんより手間とお金と時間がかかるよ




外身は一級品、中身は廃棄品


彼にはそんな言葉がお似合いだと思う。





私忍足先輩、私は跡部先輩という口論は授業の始まりのチャイムがなるまで繰り広げられたのであった。










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