なんだか最近只ならぬ視線を感じてな。
それもある時に限ってなんやけど。
そのある時とは一日一回ある`英単語テスト`の時間。
自分で言うのもおかしいが俺はモテる。
部長の白石ほどではないが確かにモテてるわけや。
だから視線を感じるのはいつも。
やけど英単語テストの時に視線は違うんや。
なんやろ。上手く言えへんけど。
あれは殺気というんか。
とにかくおぞましいものを感じる。
毎回夜な夜な英単語テストの勉強をしてきて満点を狙う俺にはその視線が邪魔でならないわけや。
どうにかその視線の主に一言言ってやらなければ。
今まで沢山の女子を泣かしてきたから恨まれるのは当たり前や。
だがあの視線はまた違うものに感じる。
犯人はだいたいわかっとる。
視線は俺の後ろからやから、絶対後ろのやつや。
といっても俺は一番前の席なんやけどな。
結局はクラスの誰かしか分かっとらん。
心当たりは無いはず何やけどなぁ。さっぱりや。
だがこんな俺にも転機がやってきた。
それは英単語テストの結果が返ってくる時に発した担当教師の一言やった。
「忍足とみょうじは仲いいんやなぁ。毎回間違えるとこも一緒なんやから。まぁほとんど満点やけど」
みょうじとは俺の斜め後ろの奴や。
しゃべったことはないが、噂で不思議な奴だと聞いている。
なんでもレモンをまるごと鞄の中に入れて消臭してるだとか何とか。
ハイセンスやな。
きっと犯人はあいつや。
おれは確信した。
しかも見とるだけでなくカンニングしとるやなんて。
休み時間早速本人確認を実行した。
「みょうじさん、英単語テスト俺の答えカンニングしとるやろ」
初会話がこれとか最悪や。でもやり遂げなアカン。
たいていの奴は認めへんやろう。絶対追いこんだる!
「しとるよ」
俺の予想とは裏腹にあっさりと彼女は答えた。
飄々とした顔で。
は?何?だから?カンニング?善行やん。ぐらいの態度だった。
「何でそんなことすんねん」
「だって忍足君毎回勉強してきてがんばっとるやろ。その努力を分けてもらお思ってな」
「その割には殺気感じたんやけど」
「ああ、いつも間違えたら消しカス耳に入れたるからなって念送ってた」
「えええ」
だからどこからか消しカスが飛んできたことがあったんか。
アカン!こいつアカン!
(ちなみに後ろからどうやってカンニングしてんねん。見えへんやろ。)
(手の動きで分かるやろドアホ)
(えええ、コイツすげー!)
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