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ぱっと目を開けるとそこは見覚えのない真っ白な天井だった。
あれ、どこだここ。何で私はここにいるんだろう。


「やっと気が付いたか」

視界に突然映ってそう言った人。

「あぶ、とさん」

私は上半身を起き上がらせ彼と対面するようにベットの上に座った。

「全く心配かけやがって」

そう言って阿伏兎さんは私の頭を撫でた。
ああ落ち着く。

周りを見渡してみると沢山の医療機器や薬品があった。
どうやらここは医務室のようだった。


「私なんでここにいるんですか?」

「何も憶えてねえみてえだな」

はあ、とため息を大きくつき私をジッとみた

「怪我はねぇみたいだが、誰かに襲われたりしたか?」

「いや何も」

「じゃあ何だってんだろな。お前さん朝早くに廊下で倒れてたんだよ」

「廊下で?」

「それを団員が見つけて運んだらしい。倒れる前のこと憶えてねぇか」


理由はすぐ思い当たった。
実は昨夜から今日のために、阿伏兎さんのためにチョコケーキを作っていたのだ。
何回も失敗してやっと出来上がったのが朝で、多分その疲労から倒れてしまったんだろう。


「うーんと、えーと」

「まあ日頃から動きまくってるからそのせいでもあるか」




「阿伏兎さん!」

「お、おう。どうしたイキナリ」

「…ちょっと行ってきます!」


そういって医務室から出る。そして自室に置いてあるケーキを手にして廊下を駆け出す。
もう心の準備は出来た。ずっと伝えられなかった想いを伝えよう。

医務室へ通じる廊下の曲がり角に差し掛かったときだった。
目の前に桃色の髪が見えた。
その瞬間体中に僅かな痛みが走った。



「わあびっくりした。大丈夫?」


私は団長とぶつかって後ろに吹っ飛んでしまった。
だけど団長が私を抱きかかえて下敷きになってくれたおかげで衝撃は僅かで済んだ。


「だだだだ団長!」

あまりにも顔が近かったので反射的に団長を押しのけてしまった。


「ひどいなあ」

団長はケラケラと笑った。

「ケガしてないですか?」

「うんしてないよ。俺を誰だと思ってるの?」

「よかった。ありがとうございます」

「どういたしまして。俺もなまえが無事でよかった。今度から気をつけてね」

「はい。今度から注意します」

「あり?こっちは大丈夫なの?」

団長が指を指したほうをみてみる。

「あーっ!」

そこにはやっとの思いで出来たケーキの悲惨な姿があった。
頑張ってデコレーションした真上の部分が床に接触していて
チョコクリームが散らばっている。


「阿伏兎さんのために作ったケーキが…」

私の目には絶望の色しか映らなかった。


「俺でよかったら食べるよ」

「おい、そこのすっとこどっこい」


聞きなれた愛おしいほどの低い声が聞こえた


振り向くと眉間に皺を寄せた阿伏兎さんがいた

阿伏兎さんは無残な姿のケーキの前に屈み、指でスポンジとチョコクリームを摘み自身の口に持っていった。


「うめえじゃねえか」

私のほうを向きいつものどこか優しい仏頂面でそう言った。


「ごめんなさい」

「何謝ってんだ」

「汚いもの食べさせちゃって、阿伏兎さんは優しいですね」

阿伏兎さんはまたため息をついた。

「好きな女が自分のために作ってくれたのを食べねえ奴がどこにいんだよ。ありがとな」

「あ、ぶとさ」


次の瞬間には私は温かい腕の中にいた



「俺のために作ってて疲れて倒れたんだろ。ばか野郎」




一本とられた
(俺なんか邪魔みたいだね)
(ああこいつと二人にしやがれ)
(あ−あ、俺のものにしたかったのに。)
(今回はしょうがないから引いてあげるネ)

















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