昨日の夜から降り続く雨は昼になった今でもまだまだ止みそうにない。空はどんよりと分厚い雲が泳いでいて今にも雷が鳴りそうだった。昼間なのに夕方みたいに辺りは薄暗い。テレビの砂嵐みたいな外を窓辺から眺めた。今夜は任務があるってのに最悪、嫌だなぁ。コートは濡れて動きにくいしブーツの中に水が入って気持ち悪いし。別に私がする訳じゃないけど、洗濯物が乾かないし。つまるところ私は雨が好きじゃない。というより雨が好きな人なんてあんまりいないと思う。ん?でもスクアーロは確か雨の守護者だよね。スクアーロは雨が好きなのかな?どうでもいいことをぼんやり考えていた私の視界に真っ黒な蛙が映った。…は?蛙?


「…フラン?」


蛙だと思ったのは帽子で、ヴァリアーで蛙の帽子を被るのはひとりしかいない。フランだ。フランは雨が降りしきる中傘もささずぽつんと佇んでいた。確かフランは今朝任務に出た。時間的に戻って来ても可笑しくないけどこんな雨の中だから迎えがあるはずだ。仮になかったとしてもなんであんなところにいるんだろう。私の部屋は2階にあるからフランの表情なんかは詳しく解らない。どっちにしろフランは元から無表情だから表情から読み取ることは出来ないんだけど。フランはしばらく私と視線を合わせた後ゆっくりと両手を上げて大きく振り出した。聞こえないけど口を動かしてるから「おーい」とか言ってる。あ、あいつバカだ!やっと正気に戻った私は入口に立ててあるビニール傘を掴んで廊下を走り抜けた。外に出ると部屋で見ていた場所でフランはまだ両手を上げていた。


「こんな雨降ってんのに傘もささないで、風邪引いたらどうすんの!」

「車の中からあなたが見えたんでー」


だからなんだ。軽く脱力感を覚えながらフランを傘の中へ入れてあげた。前髪からポタポタ水が滴り落ちてる。水も滴るいい男と言ってやりたいところだけどなんだか濡れそぼった子供にしか見えない。てゆうか車に乗ってたなら降りなければよかったのに。タオルがないから手で頭をがしがし掻いてやる。体がすっかり濡れてしまってた。風邪を引いたらボスに怒られるんだから。私が気付かなかったらどうするんだよ。


「ここにいれば」

「ん?」

「絶対、あなたが来ると思ったんでー」


にこり、と。いや、無表情だけど。雰囲気が和らいでフランが笑ったように見えた。思わず目を見開く。このカエル、無表情で何を言ってるんだろう。そんな恥ずかしいことをサラっと。最近思ったけどフランはタラシっぽい。って本人に言ったら怒るから言わない。顔に熱が集中するのが解って俯いた。フランの手が私から傘を取って肩を引き寄せる。おいおいおい、私まで濡れてしまうじゃないか。気恥ずかしいのも手伝ってフランを見上げた。


「戻って風呂入りましょー」

「私今夜任務なんだけど」

「ミーも手伝いますからー」

「…じゃあ入りましょー」


濡れないように肩をぴったり引き寄せて屋敷内に戻る。濡れたフランは冷たかったけど嫌な感じはしなかった。傘は屋敷の入口に置いておく。どうせ夜の任務で使うだろうし。またフランとふたりで相合い傘でもしよう。うん。これなら雨の日も悪くないかも。なんちゃって。



雨時々恋模様




(100419)
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -