次の島ではエースと出掛けようと思っていたのに生憎の雨となり、仕方なくその日は船でお留守番になった。ちょっとくらいの雨ならお気に入りの傘に長靴を履いて出掛けたけど残念なことに大雨になってしまった。昨日はあんなに晴れていたのにグランドラインって難しい。一気にやる気が失せて自分の部屋のベッドに沈んでいた。ザーザーザーザー、雨風の音が耳につく。ちくしょう、お前さえいなければ今頃わたしはエースと出掛けていたのに。雨なんか大嫌いだ。天井を睨み付ける。木目が顔に見えて、わたしを笑った気がした。

憂鬱だ。こうなったらエースのところへ行こう。せっかくだしお気に入りの傘に長靴に雨合羽着て行こう。1分で着替えたわたしは意気揚々とドアを開けて飛び出した。その瞬間、お気に入りの傘が暴風に拐われた。ああっ!と叫んだ声も雨に掻き消される。お気に入りだったのに。ちくしょう、ちくしょう。雨なんか大嫌いだ。雨合羽のフードをしっかり押さえて足を動かした。















「…ど、どうしたんだよ」


エースの部屋に着いた時わたしは既にずぶ濡れだった。雨合羽も破れちゃった。長靴の中もぐっちゃぐちゃ。これは最悪だ。雨合羽も長靴もまとめて部屋の隅に投げる。ずぶ濡れのシャツもズボンも同じように投げた。キャミソールとパンツだけになったけど、わたしとエースは浅い仲ではないので問題はない。ノープロブレムってやつだ。髪を絞っていたら身体がぶるっと震えてくしゃみが飛び出した。まずい、寒いかも知れない。鼻をぐずぐず鳴らしてなんとなく振り返る。そこにはベッドに座ったエースがいる。バスタオルを開いてこっちを見ているということは、わたしを待っているみたい。駆け寄ってエースの胸に飛び込む。ああ、あったかい。


「お願いしやす」

「畏まりやした」


ふざけて言ったらふざけて返された。なにそれ、変なの。なんだよ、お前の真似だろ?他愛ない話を交わしながら、エースはわたしの頭を拭いてくれた。なんだかマッサージみたいで心地好い。あったかい。ふわふわする。さっきまで鬱陶しくて仕方なかった雨風の音なんか全然気にならない。エースにもたれて身体の力を抜く。とくりとくり。ああ、エースの心臓の音。いのちの声。あったかい。エースはあったかいなあ。


「おい?寝るのか?」

「ん、眠たいかも」

「寝たら襲っちまうぞ」

「…かかって来なよ」


見上げて、ニッと笑う。エースは一瞬目をまんまるにしたかと思うとわたしと同じようにニッと笑った。そのまま、そっと重なるくちびる。とくんとくん。ああ、今の心臓はわたしの音だったのかな。エースの手がわたしの濡れた髪を掻き上げる。離れたくちびるがつめてェなとまた笑ったから、わたしも笑ってしまった。さっきまで雨なんか大嫌いだ、なんて言っていたけれど、案外キミも悪くないかも知れないね。





Thank You Cota!
100907/TEN
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