最近、気が付いたら目で追っている。その所為かあいつの鋭い目だとか薄い唇だとか意外とセクシーな首筋だとかを覚えてしまった。それを見る度に心臓がどくどく騒ぎまくる。顔はカッと熱くなるし上手く息が出来ないしどういうことなんだろう。病気なのかな。あいつを見る度にこうなるんだからあいつが原因だと思うんだけど。だけど私に医学の知識は皆無だからチョッパーに診て貰うことにした。チョッパーは私の体に聴診器をぺたぺた当てた後にうーん、と首をかしげた。どうやら問題は無いらしい。ゾロを見てその症状が出るならしばらくゾロを見ないようにするんだ、と言われて検診は終わった。言われてみればそうである。あいつを見ておかしくなるなら見なければいいんだ。それからなるべくあいつを視界に入れないように過ごしてみたものの、何故だかますます胸がぎゅうぎゅうと締め付けられるような感覚に襲われる。なんでだろう。私はチョッパーの診断通りにしただけなのに。これはどうしたものか。そんな時だった、あいつが珍しく私を飯だと呼びに来たのは。珍しいも何も私が部屋から出て来なかったからなんだろうけど。でもこいつが呼びに来るなんて珍しい…けどまあいい。ご飯だ。部屋を出て行くあいつの背中を見つめてふと思った。胸が、苦しくない。ぎゅうぎゅうしてるのは変わらないけど、嫌じゃない。こいつを見たら顔が熱くなる。ふわふわする。ああそうか。私は、ゾロが好きなんだ。遠ざかる背中に手を伸ばす。気が付いたら口を開いていた。
















最近、気が付いたら考えている。眠る時もトレーニング中も飯の時すらも考えている。大きな目を縁取る睫毛が長いこと、ぽってりした唇が餓鬼っぽいこと、細い首がか弱そうなこと。そんなことばかり考える。何がそうさせるのかはさっぱり解らない。ただあいつのことを考えるの胸がモヤモヤする。苛々するのと似ているけどそれとは違う気がする。風邪なんざ滅多に引かないが病気にでもかかったのだろうか。そうとくればチョッパーだと思ったがチョッパーは生憎その時既に他の誰かを見ていた。まあ熱がある訳でもないし大丈夫だろ。甲板をうろついていたらロビンがいた。ロビンは俺を見てクスクス笑った。最近ぼんやりしてるのね、と言われて首をかしげる。ぼんやりしたつもりはないがロビンが嘘をつくとも思えない。もしかするとロビンならこのモヤモヤが解るかも知れない。ロビンにすべてを話すとロビンは目を丸くして、ふふふと笑った。好きなのね、と。考えることが嫌いな俺には解らなかった。スキ?俺があいつを?ロビンは楽しそうに笑いながら部屋に入って行った。取り残された俺は呆然とするしかなかった。好き?俺が?そう考えると柄にもなく顔に熱が集中する。俺らしくねえ。そう思った翌日、あいつがやたら俺を避けている。俺は何か仕出かした覚えはないし、どうしたものか。あいつが俺を避ける度に何故だか心臓がズキズキと痛んだ。俺はやっぱり病気なのかも知れない。あいつに避けられて何日か過ぎた昼飯時、あいつは部屋から出て来なかった。既に席に着いたルフィから呼んで来い!と言われて渋々部屋に向かう。覚悟を決めて部屋のドアを開けるとあいつはベッドに座っていて、呆然と俺を見上げていた。飯だ、と言って背中を向けるとあいつが立つ気配がする。そしてふと気付く。心臓の痛み、消えた。それからカッと顔が熱くなる。ああそうか。俺はこいつが好きなんだ。気が付いたら俺は振り返っていて、口を開いていた。





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