※性的描写有り!






















彼らが私に好意を持ってくれていたのは知っていた。知っていたけど、それに応えることは出来なかった。私は彼らを…マルコ隊長は上司。自分の隊の隊長だと思っていたし、イゾウ隊長は仲間だと思っていた。マルコ隊長もイゾウ隊長も大切な家族だと、そう信じて疑わなかった。だからマルコ隊長にお前を想っていると告げられた時もイゾウ隊長にお前しか要らないと告げられた時も断った。勿論ふたりのことは大好きだ。でもこれは『恋』じゃない。男としての魅力を感じたことは、一度も無い。私はふたりとは家族でいたかったから。ずっと楽しく旅を続けていたかったから。

なのにどうして。


「っあ、嫌ッ、やァ!」

「ああ嫌だろうね…だが止めてやんねェよ、分かってんだろ?」

「はっ、あァ、んっン…」

「いいねェゾクゾクする。もっと喘いで…外に聞こえちまうくらいさァ…」


ねっとりと肌を這うようなその声で自我が完全に現実に戻る。だけどすぐに怖いくらいの甘い波に身体を拐われてしまう。ここはモビー・ディック号、武器庫。いつ誰が来たっておかしくないのに。

何も変わらない日常だった。何も変わらない。何度だって言ってやる、何も変わらない日常だったんだ。ただ船内を歩いていたらイゾウ隊長にちょっと話があると呼ばれて武器庫まで来た。人目のつかないところへ来るということは誰にも聞かれたくない話をするということ。そう思った。武器庫の奥へ手招きされた時だって微塵も疑わなかった。だって私達は家族。疑う必要が無い。それが、どうだ。私はうつ伏せに転ばされた。背中からイゾウ隊長が覆い被さってきて服の中に骨張った手が侵入してきた時、私は初めて彼を疑った。悲鳴をあげようとした時はもう遅い。そういう行為に疎い私の口から洩れたのは嬌声だった。


「なんで我慢する?辛ェだろう?無理するなよ…ほら」

「んうッ…アっ、ん、で…」

「何が。何がだよ」

「う、して、こんな…ッ」

「はは、悪ィ。おれが我慢出来なくなったんだ」


時々垣間見せる普段の『顔』が逆に恐怖を煽った。明るい声とは裏腹にイゾウ隊長の手は止まることを知らない。年相応に膨らんだ胸を通り腰を撫でてそこへ行き着く。この行為に慣れていない身体は既に堕ちていて、床には汗やら唾液やらの体液が散らばっていた。嫌、なのに。厭わしい限りなのに。身体は意思と反して、震えることしか出来ない。


「お前も悪ィんだよ。マルコとあんな仲良さそうに喋っちまってよ」

「そん、なこと…」

「妬いて妬いて妬いて妬いて…おれァ焦げちまった」

「ア、いやッ…」

「おれも嫌だよ」


イゾウ隊長の長い指が真っ直ぐ奥を抉る。ぐちゅっと水音混じりのそれにきつく目を閉じた。今すぐにでも舌を噛み切ってしまいたかった。だけど瞼裏にオヤジやみんなの顔が浮かんで、どうしても踏み込むことが出来なかった。こんなに女に生まれたことを憎んだ日はない。マルコ隊長と喋って何が悪い、私は部下なんだ。話くらいする。それにマルコ隊長は私が気持ちを受けとめなかったからといってよそよそしくなることもなく今まで通りでいてくれた。それに甘えていたと言えばそうかも知れない。だけど、話をしたくらいで嫉妬されちゃあ堪ったもんじゃない。痺れる身体を無理矢理動かして壁に手をついた。何とかして立ち上がろうと思った。


「助けを呼べよ。お前の大好きなマルコ隊長をよォ」


壁についた手を、上から押さえ付けられる。そこに触れたままのイゾウ隊長の手は更に激しさを増していき、膝ががくがくと揺れた。私は決してマルコ隊長を『男』として見たことはない。ただ海賊として憧れている部分は、確かにあった。でもそれは『恋』ではないしましてや『愛』でもない。イゾウ隊長が思うことは何もない。なのにどうして分かってくれないんだろう。


「っ、あ…マルコ隊長は、そんなんじゃ…!」

「そうだよな、マルコ隊長はお優しいからな…おれなんかたァ違う」

「はっ、あ、んァ…っ」

「あいつはそうだ。お前を大切にする。お前から手を引く時だって笑いながら子ども相手に何やってんだろうなってよ」

「や、も…っ、いや…!」

「おれは割り切れねェ…歳なんざ関係ねェ、おれはお前を『女』として見てんだ!」


どうしてこうなってしまったの。変わらない日常は何処へ落としてきてしまったの。ここは何処なの、私は何処に迷い込んだの。目の前が真っ暗になるみたいだった。いっそ真っ暗になってしまった方がマシだったのかも知れない。握り閉められた手がミシッと悲鳴をあげる。そんな痛みより私を恐怖で包んだのは、お尻に当たる熱いもの。首筋にかかる荒い呼吸に本気でゾッとした。逃げようとしたけどとろとろに蕩けた身体は言うことを聞かない。中途半端に脱がされたズボンが膝で絡まり引っ掛かって足も動かせなかった。誰かたすけて。マルコ隊長、マルコ隊長助けて。お願い助けて。片腕が腰に回される。声が出ない。ぐっと引き寄せられる。身体が動かない。本当なら誰にも見せることも触れさせることもしないそこへ、恐ろしいくらいの熱があてがわれた。

嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だイヤダ嫌だ厭だ!


「愛してる、」


























涙がこぼれた。私も、イゾウ隊長も。





Special Thanks toma!
110607/ten
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