最初は浅く、軽く触れるだけだった。それは次第に勢いを増して深くなり、熱くなる。何度も何度も触れては離れて触れては離れて。単調なパターンなのにどうしようもなく胸がギュウと狭くなった。息が苦しいと胸を押し返したらそうはさせないと言わんばかりに強く引き寄せられた。片手は腰に、もう片手は後頭部に回り動きを封じられる。それが少し怖いと思った。また唇が離れて、噛み付かれる。勿論ほんとうに噛み付かれた訳ではないのだけどそういう表現が似合うくらいの勢いで貪られた。角度を変えて深く、時折優しく触れるそれが怖い。熱い、あつい。熱すぎて触れている部分から溶けてしまいそうだ。苦しい、熱い、切ない、いとおしい。マルコの背中に強く爪を立てる。そしたらマルコは唇をチュッと吸って熱が離れた。触れていたら怖いと思ったけど、離れたらもっと怖いということを知った。新しい空気を胸いっぱいに吸い込む。何故だろう、なんだかひどく安心して涙がぼろりと零れた。「…俺も若くねェんだ」急にマルコが言った。顔を上げると無表情が私を見下ろしている。その切れ長の視界に入っているのだと思うと誇らしかった。マルコは私の零れる涙を舌でなぞり唇で拭う。瞼に、頬に、そして唇に。涙の味を分かち合う。「あんまり煽るなってのい」また深く、熱く。私はどろどろに溶けていく気がした。もう怖くない。嗚呼そうだ、きっと私は生まれる前この人とひとつだったのだ。これから本来の姿に戻るだけ。だから怖くなんかない。震えてるのは嬉しいからだと言い聞かせて、再びマルコの背中に爪を立てた。





(100228/にやり)
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