「最期に気持ちよくなれて幸せかな?」


今の今までひとつになっていた女が銃を向けて、そう言った。聞き間違えかと思ったが銃口は確かに目の前にあって見間違うことはなかった。激しい行為の所為で化粧が落ちてしまっていて普段よりも顔が幼い。それでも元の造りが良くて笑えばアイドル顔負けの光を放つのだとか前に自分で言っていた。だがその笑顔は銃を持つ時にする顔じゃあないのではなかろうか。そもそもなんでこいつが銃を持ってやがる。リボルバーなんざ一般人が、ましてや女が手にするもんじゃねえ。女はにっこり笑ったまま何もしなくても色付いた唇をペロリと舐めた。


「君は色々知り過ぎたんだ。わたしは君を殺す為に雇われたの」

「…頭沸いてんのか」

「正常だよ。なんならもう一回する?」


女はにっこり顔のまま、銃を構えたままだ。なんだこれは。悪い夢でも見てんのか。だけど体に残るけだるさはリアルだし何より女の首筋に咲く紅い花は俺が付けたものだ。確かに俺はついさっきまでこの女を抱いていた。そんな女がいきなり銃を向けてきて正常だと?はっ、有り得ねえだろ。雇われたって、殺し屋とでも言うつもりかってんだ。知り過ぎた?脅迫手帳のことか。あれには日本中をはじめに各国のホームレスからド級の偉人、プリンスプリンセスレベルの人間のネタもある。知り過ぎたと言われてもどのネタの話か解らない。訛りもねえし目も黒いし肌の色も標準、こいつ日本人に雇われたのか。政治家か?銃を扱うなら極道者の類か。どうしたものか。まだ信じた訳じゃねえがこいつの頭が正常に働いていて本当の殺し屋ならかなりやばい状況だ。いくらマシンガンを振り回す俺でも人を殺ったことはない。だがこの女は違うんだろう。細めた目の奥に闇が揺れていやがる。犯罪者に多い目だ。こいつがやたらアイメイクが濃いのはこの目を隠す為だったのかも知れないと今更ながら思った。


「悪魔もやっぱり人の子だよね。セックスに夢中で何も気付かない」


そんなにわたしのなかはよかったかな?女はくすくすと楽しそうに笑う。何処の高校男児がヤリながら銃構えんだよ。ヤってる最中は無防備に決まってんだろ糞女。だから狙われたのか、畜生情けねえ。眉間にぴたりと向けられた銃口は寸分の狂いもない。女が少しでも力を篭めれば俺はあっという間に三途の川だ。愛銃のマグナムは制服の懐。制服は脱ぎ捨ててベッドの下。ここまでくるとダセーとしか言いようがない。俺は誰の情報を手に入れたんだ?やばい組織の人間のネタでも手に入れちまったか?チッ、次からは気を付けよう。まぁ、次があればの話だがな。


「抵抗しないの?」

「ケケ、死ぬのは御免だな」

「でしょ?わたしも殺したくないよ」

「…なに」

「君となら逃げれる気がするんだよね。ねえどうする?」


女は銃を窓の外に投げ捨てる。明け方の空を見つめて女を押し倒した。ああそうだよな、俺は、お前は、愛し合ってる。それなら愛の逃避行と洒落込もうじゃねえか。だが明け方の道を走るにゃリスクがでかいから闇に染まるまで、俺達は純白のベッドに沈む。



04:26






101025
昔のものを修正してうp
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