腹に置かれた手が震えてる。腕に挟まれた胸が滑らかな曲線を描いていて、絶景だと思った。俯いた顔に髪が貼り付いていて表情が読めない。か細い吐息ばかりこぼして震えるだけ。唇を噛み締める仕草に堪らなく欲情した。嗚呼、綺麗だ。火照ったくびれをそっと撫でる。なまえはびくんと身体を揺らした。触っただけなのに、可愛い奴。こうして肌を重ねるのは幾度もあるのに、なまえはいつだって新鮮な反応を見せてくれた。なまえの頬から伝い落ちた汗がおれの胸で弾ける。汗で束になった前髪の隙間から濡れた双眸が覗いた。おれを映して、少し細くなる。


「うごかな い、でね」

「なまえ」

「今日は、あたしがうごく、から」


っは、と。小さいながらも立派に艶やかな声が漏れる。ゆっくりゆっくり腰を浮かせて、沈めて。じわじわ迫る波に顔を歪めた。悪くはないが、緩やか過ぎる。もっと強いものが、荒波が欲しい。こうして必死で悦ばせてくれるのも嬉しいが、足りない。そう思うのは欲張りだろうか。なまえをおれの上で、世界が壊れてしまうくらいに乱れて欲しい。

なまえの腰を掴んで強く引き寄せると共に強く突き上げた。なまえが悲鳴に近い声があげる。身体を大きく跳ねさせて弓なりにしなる。ガクガク震えて胸に倒れ込んできた。その薄い肩を抱き締めて律動を始める。なまえがぽろぽろと涙をこぼしても止めなかった。止められなかった。なまえが胸に爪を立てる。

濡れた唇が、おめでとう、と動いた。





















「っていう夢を見たんだが」

「死ねばいいのに」

「てめェの男に言う台詞か」

「いい歳こいたオッサンが誕生日になんちゅう夢見てんのこの変態」

「まァ、男なら仕方ねェだろうよい」

「最低」

「何処行くんだよい」

「眠いから寝るの」

「…おめェ、今の話聞いてたかい?」

「聞いてたけど」

「だったら」

「あたしの部屋」

「?」

「…鍵かけてないし、ついてくるなら好きにすれば?」


















急いで呼び止めて掴んだ肩。振り返ったその顔は真っ赤で、我慢出来ずに噛み付くようなキスをした。よし、最高の誕生日になりそうだ。





(101005)
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