喧嘩した。六年ろ組の名前も知らない不細工な忍たまと。廊下で擦れ違った直後後ろからドロップキックをかましてやった。相手は面白いくらいぶっ飛んだが一緒に歩いていたこれまた不細工な忍たまが「いきなり何すんだよ!」とわたしを突き飛ばしてきた。だけど、それくらいじゃ引き下がらない。かくして二対一のガチバトルが始まったのだが勝負が着く前に木下先生や山田先生、シナ先生に止められてしまった為結果は引き分けである。まあ二対一で同等にやりあえたわたしの勝ちですよね!って笑顔でシナ先生に言ったら思いっ切りビンタされた。


「いだっ、だ、たたた…」

「…馬鹿なことを」

「ふん、馬鹿はあいつらよ」


今度会ったらケチョンケチョンにしてやる!と中指を立てたらゲンコツされた。長次ってば容赦ないなあ。

あれから怪我まみれになった不細工たちは保健室に向かったがわたしは救急箱だけ貰って長次の部屋へ向かった。だってあいつらと同じ場所にいたくないもの。わたしが喧嘩したという噂は広まっていたらしく長次は呆れたように溜め息を吐き出してわたしの手当てを始めてくれた。相手は男ふたり。力では敵わず掴まれたところや叩かれたところが青痣になってしまってる。まあその分わたしは髪を引っ張ったり金的狙ったりしてやったんだけども。顔とか思いっ切り殴ってやったしね。思い出すと笑ってしまう。ついニヤニヤしていると長次から頭をぽんっとはたかれた。


「何故、喧嘩なんかした」

「だってむかついたもの」

「…何故」

「だってあいつら、長次を馬鹿にしたんだもの」


擦れ違った時に聞こえた。聞き間違いなんかじゃない、聞こえたんだ。中在家ってムカつくよな。優等生ぶってさ。そうそう、嫌味言ったって言い返しもしない。この前の実技の授業だって中在家と七松はぶっ千切りだろ?七松は実技だけだからともかく…。中在家は座学もイイからな。あれって絶対先生が贔屓してんだぜ。そこまで聞いてわたしはぶちギレた。ふざけんなって思った。長次がどれだけ鍛練してるか、寝る間も惜しんで勉強してるか、何も知らないくせに。人付き合いの苦手な長次は先生に愛想を振り撒くことも出来ないからどちらかと言えば先生には暗い奴、だとか思われてる。だから贔屓なんかされてない。全部長次の実力だ。それをひがんだ挙げ句悪口を言うなんて信じられない。だからわたしはドロップキックをしてやったのだ。しかも長次に嫌味を言ったなんて許せない。まだまだ殴ってやればよかった。


「…ありがとう」


苛々してきて眉間に皺を寄せたら長次からそっと肩を抱き寄せられた。うわ、あ。長次からこんな風にされるのって初めてかもしれない。長次がわたしの頬を撫でる。そこは叩かれたのか少し赤くなっていた。まったく、嫁入り前だってのに。やっぱり今度会ったらケチョンケチョンにしてやる。しばらく長次に抱き寄せられたままでいたら廊下の方で足音がした。小平太…にしては静かだ。よく聞けば話し声もする。あれ?この声、知ってるかも。


「いてて…あのくのたまめ、普通喧嘩吹っ掛けるか?」

「確か中在家の彼女だろ?だからじゃないのか?」

「中在家も変だよな。あんな可愛げのない女のどこがいいんだか」

「だよな。ブスだし胸だってナイし」

「くのたまの方も変だ。中在家のどこがいいんだ?」


保健室からの帰りなのかさっきの不細工な奴らの声が聞こえた。わたし達はゆっくり、ゆっくりと身体を離す。長次と顔を見合わせてニッと笑った。長次は立ち上がりながら縄標を構えている。わたしも参戦したいところだが下手すると巻き込まれそうなのでやめておこう。


「…ケチョンケチョンにしてくる…」

「うん、お願いね」


長次のどこがいい?そんなの愚問だ。こうやって優しいところが素敵じゃないか。まあ、今となっては遅いけど。わたしは長次が部屋を出ていったのを見届けて、静かに合掌した。



なむあみだぶつ





101115
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -