「ねえ伊作」

「なにー?」

「これって春画ってやつ」

「うわああああッ!」


穏やかな昼下がり。伊作の部屋で薬作りの手伝いをしていた私は押し入れから不自然にはみ出る本を引っ張った。ずるりと出て来たそれには裸の男女が描かれて思わず目をぱちぱちさせた。うわあ、ないすばでい。えろい。何ページかペラペラめくった後静かに閉じる。私の持つこれが伊作の春画だってことはすぐに分かった。まあ伊作も男なんだしこれくらい普通か。私に背中を向けて一心不乱に薬草をすり潰す伊作。名前を呼んで本を掲げたら普段の不運っぷりからは考えられないくらい凄まじいスピードで奪い取られた。おお、伊作もこんな動きが出来たのか。伊作は本を胸に抱き締めて私を凝視している。顔が茹でたタコみたいに真っ赤だった。


「こここっ、これはそのっ…違うんだ!違うんだよ!」

「え?春画じゃないの?」

「そ、そう!これは女体の神秘っていうか保健委員長としては持ってなきゃ駄目っていうか…!」


そうか。そう言えば伊作って保健委員長だった。それなら女の人の身体の作りとか知ってなきゃいけないよね。でもあんなすごいえろい感じの本で女の人の身体のことが分かるのかな。まあ私に保健的知識はないから何も言わないでおこう。伊作は座布団の下に本を隠すとその上に座った。首も耳も真っ赤だった。なにをそんな恥ずかしがるの、保健委員長としては持ってなきゃダメなんでしょうが。変なの。伊作はすり鉢を手に持ってしばらく固まった後、恐る恐る私を振り返った。瞼を半分伏せていて私を睨むような目つきだったけど真っ赤だったからなんだか面白かった。


「…軽蔑した?」

「なんで?」

「こ、これ持ってるから」

「保健委員長なら持ってなきゃダメなんでしょう?」

「えー…ま、まあね、うん」

「そういうので女の子の身体の作り分かるの?」

「ん、まあ、えー…もうこの話やめようか」

「私に言えばちゃんと教えてあげるのに」


伊作の手からすり鉢が滑り落ちた。



どういう意味?





(100506)
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