死んだら星になるのだと彼女は言った。人は死んだら星になるのだと。流れ星が流れたらそれは転生の瞬間だと笑った。彼女はとても真面目な人だった。文次郎よりは柔らかく私よりは表情豊かな人だったけれど冗談など一切言わない優秀なくノ一だった。だから彼女がそう言った時は驚いた。何故かと訊くのも忘れてしまっていた。彼女はまた笑う。綺麗に、消えそうに。彼女の細い指がゆっくり天へ向けられる。一面に広がる星空に彼女が吸い込まれていきそうだと思った。


「私が星になって流れたら、願ってね」

「……」

「長次の願いなら叶えられる気がするから」

「…解った」


彼女の綺麗な目が、ゆっくり、ゆっくり伏せられてゆく。天へ向けられていた指が静かに地面に落ちた。それから彼女は動かない。真っ白になって朽ちてゆく。確かに在った熱が消えてゆく。彼女の胸には緋色の大輪が咲いていた。鉛弾に植え付けられたソレはひどく彼女に似合っている。例え死を伴うものであってもソレは彼女らしい。似合うけれど、私は好ましくない。静かなのは怪士丸だけでいい。青白いのは仙蔵だけでいい。冗談を言うのは安藤先生だけで充分。色を失い乾いた唇の端に着く血を拭う。不意に空を見上げたら星がひとつ落ちた。あれは彼女だったのだろうか。彼女であれば願いを言わなくてはなるまい。私は彼女に何を願う?動かない彼女を見下ろす。何かに濡れた唇をそっと開いた。


「…もう、一度」


笑ってはくれないのかと、呟いた私の声は星空に溶けて消えた。



しろい夜





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