「中在家って性欲あるの?」


図書室にて。本棚の整理をしていた中在家にそういう質問をぶつけたら中在家は本棚にガンッとおでこをぶつけた。うわあ痛そう。いきなり本棚にぶつかるなんてどうしたんだろう。たまたま近くにあったからパラパラめくっていただけの本を閉じて中在家を見る。中在家は両手で本棚に手をついておでこを離した。おでこは真っ赤になっている。心なしかフシュウと煙を噴いてる気もした。右手でゆっくりおでこを押さえて私を見つめるその顔は何故か青ざめている。


「…いきなり、何を」

「組で男子ってエロいよねって話になって。で、中在家は性欲無さそうってなったの」

「……」

「中在家が猥談してるの想像出来ないんだもん」


食満とか潮江とかなら簡単に想像出来るんだけど。あ、あと七松も。七松はあっけらかんと話してそうなんだよね。私はおっぱいが好きだ!みたいな。暴君だし。善法寺もなんか赤くなりながら猥談してそう。立花はなんていうか、百戦練磨って感じ。でも中在家はそういう感じが全然ないんだもん。女より本、恋より本っていうイメージがある。そうつらつらと言えば中在家は引いたような目で私を見ていた。まあ引くだろうけどくノ一教室ではそういう話をするんだもん。女の子って意外とエロいの知ってた?中在家はハアと溜め息を吐き出すと懐に手を突っ込んだ。そこから出て来たのは中在家の専売特許。縄標である。え?なんで縄標?目を丸くする私の身体に瞬時に縄が巻き付く。…え?あれ、なんで私縛られてんの?


「…性欲があるのか否か」

「え?え?中在家?」

「───教えてやる」


中在家にしてはハッキリした声。中在家にしては色っぽい響き。気が付けば私はテーブルの上に押し倒されていた。いくつもシミのある天井と相変わらず無表情の中在家が視界に映る。性欲があるのか否か教えてやる、だと?それはつまりなんだ。アレか。カラダに教えてやるよってことなのか。いや待てそれは可笑しいだろう!逃げようにも中在家の専売特許によって身体の動きは封じられている。じゃあ助けを呼ばなきゃ。口を開こうとしたら中在家のごつごつしたてのひらが私の頬っぺたを撫でた。優しく、ゆるりと。手つきがすごくエロいと思った。中在家って、中在家って、もしかして立花と同じタイプの人間なのかも知れない。中在家の傷だらけの顔がゆっくりと落ちてくる。


「すみません遅れました!」


戸を開けて不破が飛び込んで来た。不破は私と中在家の姿を確認するとぴたりと動きを止めた。顔がみるみるうちに赤くなっていく。口が餌を求める金魚みたいにぱくぱくしていた。よ、よかった!助かった!中在家が舌打ちをした気がしたけど聞こえないフリをしよう。私はなんとか身体をよじって不破へ叫んだ。


「不破助けて!」

「ななななっ中在家先輩!何してるんですか!」

「何もしてない…まだ」


背筋がぞっとした。





(100402/にやり)
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