「んあ〜…」
「でけェ欠伸、色気がねェ」
「おおエース!なんか久々だね!」
「たった二日だろ。もう大丈夫なのか?」
「うん、平気」
朝、部屋から出て食堂へ向かっているとエースと会った。エースも食堂へ向かっているらしい。二日振りのエースは、当然だけど何も変わっていなかった。
実は私は、丸々二日の間部屋に籠っていた。理由は女の子なら誰でも分かる月一のアレだ。生理だ。普段はそんなに酷くないのだけど今回のはやばかった。具合は悪いしお腹は痛いし腰も軋むしかなり苛々するし、とにかく大変だった。誰か人を見れば八つ当たりしてしまうため部屋に籠っていたのである。みんなに迷惑かけたくないしね。食欲も無かったからずっと横になってた。そして今日、誰かと喋っても苛々しないし動いても平気なくらいまで復活をしたのだ。エースが「女って大変だな」と苦笑するのに対して私も苦笑してやった。
「今日の朝ご飯は何かな〜」
「お、生き返ったのか」
「死んでないっつうの」
食堂に入ればサッチからけらけらと笑われた。勝手に殺すなって。相も変わらず騒がしい食堂の中を進んで行き、いつもの定位置へ座る。今日は何を食べようかなあ、なんて顔を緩ませた時だった。目の前のテーブルにトンと、モーニングが載ったトレイが置かれた。サラダにポトフ、目玉焼きにカリカリベーコンにソーセージ、クロワッサンとベーグル。オレンジジュース。やべ、旨そう…じゃなくて。首を動かして隣を見る。トレイを置いた手を辿れば、そこにはマルコがいた。
「…持ってきてくれたの?」
「あぁ。他にも何か欲しいもんがあるかい?」
「ううん、大丈夫。ありがとう」
「何かあったら言えよい」
そう言ってマルコは隣に腰を降ろしてコーヒーを口に運んだ。なんだなんだ、マルコってば気が利くなあ。惚れ直しちゃう、なんちって。きちんと合掌してからフォークを取る。ソーセージにぶつんっと突き刺した。
「もう具合はいいのかい」
「んむ?ふん、もうへーき」
「そうかい」
「ん、うんまーい」
「なァ」
「む?」
「後で部屋に来ねェか?」
「うんいいよ」
「これ、旨いだろい」
「んむ、旨い」
「お代わりいるかい?」
「んーん、大丈夫」
「じゃあジュースを」
「まだ入ってるよ」
「……」
「……」
「……」
「……」
「部屋来たら、トランプしねェか?」
「ちょっとゆっくり食わせろや!」
飲んでいたオレンジジュースを勢いよくカンッ!とテーブルに置く。中身が少し飛び散ったけど気にしない。なんなのなんなの、なんなんだよさっきから!人が久々の食事に舌鼓を打ってるっていうのにさ!マルコはびっくりしたらしく目を丸くしている。だってさだってさ、こっちはもぐもぐしてるんだからずっと喋り続けることは出来ないんだよ。だからそっとしておいて欲しいんだよ。それなのに。私がジロッとマルコを睨み付けるとマルコはシュン…と眉を下げた。え、何その顔。初めて見た。唖然としていたらマルコの隣にいたイゾウが声をあげて笑った。それからマルコと肩を組んで私と視線を合わせる。
「そう怒ってやんなよ。マルコ、お前が部屋に籠ってたから寂しいのさ」
「は?…マルコが?」
「そ。ね、マルコ」
「…悪ィかよい」
ぽそり。そう呟くマルコが、なんかすごく可愛く思えた。やばいなにこれ。さっき正直ちょっとウザいって思ってごめん。マルコってクールなイメージがあったから意外なんだけど。これがあれか、意外性萌えってやつか。マルコはイゾウの腕をほどくとプイッとそっぽを向いてしまった。拗ねてしまったのかな。丸々二日喋ってなかったのにあんな言い方して悪かったかな。てゆうか、そんなに私に会いたかったんだ…。サラダのトマトをフォークでぶっ刺す。そのままマルコの口元まで運んだ。
「マルコ」
「……」
「あーん」
「……」
「あーんして」
「…あー」
ぱくり。素直に口を開けたマルコは素直にもぐもぐとトマトを食べた。普段は絶対にこんなことしないからなんか新鮮だ。ちょっと、イヤかなり面白い。もぐもぐもぐもぐと口を動かすマルコを見つめてついにやけてしまった。可愛い可愛い可愛い、なにこのマルコ。
「…ソーセージ」
「欲しいの?あーん」
「ん」
「美味しい?」
「ん」
「後でトランプしようね」
「ん」
「他にしたいことある?」
「……」
「マルコ」
「…お前が一緒なら」
「え?」
「お前が一緒なら、何だっていい」
「マルコ…!」
キュン。やばい、私なにか目覚めちゃいそう。
スイートスイート
マイダーリン!
「サッチ、あいつらここが食堂だって分かってんのかな」
「言うなエース。分かってるけどマルコは甘えたい、あいつは甘やかしたいのよ」
「爆発しろ」
Special Thanks hyuga!
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