「マルコ、持ってきたよ」

「おう、気を付けろよい」

「大丈夫だって。はい」

「ん、旨そうだ」


ダージリンを注いだふたつのティーカップとベリータルトをのせたトレイを持って展望台へ登る。そこにはマルコがいて、来い来いと手招きをしていた。

今日は天気も良く大した事件も無く、たまにはまったりしたいねと言えばじゃあ15時に展望台でティータイムはどうだいとお誘いを受けたのである。マルコにしてはなかなかムードのあることを言うじゃないか。展望台で、というところがポイントが高い。食堂だったらね、いろいろと邪魔が入るからね。サッチとかサッチとかエースとか。マルコの隣に座ってトレイを床に置く。


「マルコはそのままだよね」

「いや、ミルク入れてくれ」

「へ?マルコってミルクティー派?」

「たまには甘いもんが欲しくなるんだよい」


そんなものなんだ。マルコの分のティーカップにミルクを注ぐ。ティーカップをマルコに渡してから自分の分を口へ運んだ。いつもオレンジジュースとかコーラとかばっかり飲んでるけど、うん、美味しい。たまにはいいなあこういうの。温かい紅茶が舌の上を滑って喉に落ちていく。それだけで気分が和んでいく感じがする。ここんところ戦闘が続いたもんなあ。白ひげに喧嘩売るなんて歯がある奴らかと思えばなんてことはない雑魚海賊だったりしたり突然のサイクロンに大慌てしたりしてさ、結構バタバタしてたんだよね。こんなにゆっくりで穏やかな一日は本当に久し振りだ。ミルクティーを飲む横顔をじっと眺める。私もベリータルトを手に取った。


「おい」

「ん?」

「こっち、来いよい」


マルコがトレイをずらして、自分の隣をぽんぽんっと叩いた。人ひとり分の空いたスペースをジッと見つめる。何故だか妙に気恥ずかしいような気がして軽く俯いた。マルコはホラホラと言わんばかりにぽんぽんっとスペースを叩き続けている。な、なにをいまさらこれくらいで照れてんだアホか。ベリータルトを持ったままじりじりと近付く。隣に腰を降ろして、そのままマルコの肩に寄り掛かった。こうしてふたりでのんびりするのも、久し振りだなあ。単純だけど今ものすごく幸せだ。マルコの手が私の項をそっと撫でた。温かい手にじんわりと溶けそうになる。


「…素直だない」

「…ダメ?嫌い?」


マルコの顎がおでこにぶつかる。無精髭のくすぐったさに思わず顔を上げると、唇に柔らかい感触が落ちてきた。唇からじわじわと痺れに似たものが広がっていく。身体の隅々まで染み渡って、とろけていきそうだと思った。キスをする度に感じることだけど何度やっても慣れない。マルコとのキスはいつだって、余裕が無い。長かったのか短かったのかよく分からないけど、だけど、永遠にも感じた感覚がほどけていく。持っていたベリータルトが少し震えた。違う、震えたのはきっと、私の方。


「────……好き」


そっと離れた唇が、そんなことを呟く。視界に映るマルコは優しい顔をしていて胸がぎゅうっと狭くなる感覚に襲われた。ああ好きだ。私、この人が好き。ほんとに好き。そう思ったら堪らなくなって今度は私から唇を重ねた。身体が痺れる。でも、心地好い感覚。ダージリン風味のキスは、ほのかに甘かった。



世界は小さく呼吸する





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110724/ten
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