とんとんとん、緩やかなリズムで背中を叩かれる。痺れの余韻が消えない身体はすぐには反応してくれず、ゆるゆると首をもたげた。完全に顔を向ける前にぐっと引き寄せられて強く抱き締められる。息が詰まったけど、全然嫌じゃない。力の入らない手で相手の脇腹をくすぐると、マルコはふっと吹き出した。くすぐりは弱いらしい。顔を覗き込まれていたずらっぽく笑って見せる。


「…くすぐってェよい」

「うん」

「うんじゃねェ」

「ふふふ、うん」

「ほお、余裕かい」

「だるい」


正直な感想を漏らすとマルコは一瞬目を丸くしてくっと笑った。だってほんとうにだるいんだもん。まだ手足が痺れてるみたい。マルコと肌を重ねたあとは、いつもこう。甘ったるい気だるさに襲われて動くのさえ億劫になる。だけどそれを嫌だと思ったことはなく、むしろ心地好く思う。ああわたし、愛されてるなあって思う。こんなに満たされることはない。そりゃあ最中は恥ずかしかったりするんだけど…まあ、うん。慣れと言うか、幸せだからいいか、と言うか。最初は目が合うだけでよかった。それから、手が触れるだけで満足だった。次にキスをしたくなって、その先までいきたくなった。あの頃はピュアだったのかな、なんて。思い出すとなんだか笑える。


「何が可笑しいんだい」

「うん?なんにも」

「じゃあ何で笑ってんだ」

「マルコ、わたし幸せよ」

「…なんだいそりゃ」


照れ臭そうに笑ったくちびるが落ちてくる。わたしのそれと重なり合うと身体がじんと溶けていくような感覚に陥った。やわらかくってふわふわしていて不思議な気分。厚めのくちびるが頬をなぞって耳を食んだ。予想もしてなかった感覚に身体がびくりと跳ねる。重たい腕を上げてマルコの頭を抱き込めば、鎖骨に軽く歯を立てられた。


「ん、なに…?」

「朝までまだ時間がある」


熱い、熱い舌が喉を伝う。身体が震える。もしかするとわたしはこのまま食べられてしまうのかも知れない。だけどそれも悪くない。マルコになら、なんちゃって。不意にぶつかった視線はギラギラと獣染みた光を秘めていて、一瞬呼吸の仕方を忘れた。


「…まだ、お前が欲しい」


背筋がぞっと震えたのは恐怖からか、それとも。マルコの大きな手が肩を撫でてお腹を撫でて、太ももで止まった。熱いてのひら。わたしはこの手に、上手いように転がされる。今もそうだ。未だ気だるさの残る身体がじんじんと疼く。どうしよう、困った。そんな熱っぽい声で言われて断る野暮は出来ない。

マルコの後頭部に手を回す。柔らかく塞がれたくちびるに目を伏せた。胸がきゅうっと狭くなる感覚。滑り込んでくるやわらかく熱いものを受け入れる為に、わたしは小さく口を開いた。











Special Thanks moko!
110523/ten
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