からりと晴れた日だった。太陽がじりじりと大地を照らし暑さをもたらす。暑い、ああ暑い。額に浮かぶ汗を手の甲で拭って主人の元へ駆け寄った。全身緑の日輪の申し子・毛利元就様。日輪をかたどっているのか丸い輪刀を扱うとても強いお方。みんなは冷徹だと言うけれど、私は知っておりますよ。元就様がとてもお優しいことを。日輪を見つめる元就様のお顔と言ったら幸せそうで見ているこちらまで嬉しくなるのです。


「元就様」


眠る元就様の肩をそっと押した。男性にしてはさらさらで艶やかな髪が頬をかすめる。女から見ても美しいお方。前に白い肌が羨ましいですと漏らしたら戦に出ることを止めればマシになろう、と言われたことがある。けれど私は無理ですと申し上げました。元就様と共に戦うのが私の使命なのですから。そうでしょう元就様。


「戦は終わりましたよ」


元就様、起きて下さいませ。武士とは思えない程細くしなやかな体は何故だか重くて冷たい。おかしいですね。元就様、御召し物が赤黒く汚れています。早く城へ帰って洗わなければ。今日は日輪が綺麗ですからすぐに乾きますよ。さぁ起きて下さい。日輪があんなに高いところにあるのですよ。お寝坊さんは長曽我部殿に笑われますよ。元就様、元就様。


「何故、赤いのですか」


唇から零れる血を指先でそっと拭う。冷たい。何故ですか元就様。この刔れた腹は何事ですか。戦は終わったというのに、貴方は何故。元就様、元就様。起きて下さい。戦は終わりました。起きて下さいませ。呟く私の涙が冷たい元就様の頬で静かに弾けた。



音のない炎天下





101026
夜風にまたがるニルバーナ
昔のものを修正してうp
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