マルコは今日、捕われてしまったエースを助けに行く。もっと詳しく言えばジョズも親父もみんな行く。エースはそれくらいやばいところに捕まってしまったのだ。私達ナースはと言えば小船に乗って近くの島で帰りを待つしか出来ない。共に戦うことも共に救出に行くことも出来ない。私はナースでマルコは戦闘員だから。何も出来ない、待つしかない。それでも何か出来ることはないかと思って、考えついた。ナース達は最後にみんなのケアをして回ることにした。ちょっとの傷にもきっちり消毒をして気になるところにはテーピングをした。少しでも戦えるように一生懸命手を尽くした。私がいつもケアするのは仲良くしていたマルコで、この時も例外じゃない。私は真っ先にマルコのところに行った。マルコは無表情で「肩が痛む」と言ったからマッサージをすることにした。

マルコの広い肩をマッサージをしながら、私はひどく泣きそうになった。連れて行ってと言えたらどれだけ楽なんだろう。でもそれは言っちゃいけない。それはマルコを困らせるだけでしかない。


「未練のある人間ってのは、しぶとく生き残るもんだい」

「…え?」

「今の俺に未練はねェ」


マルコの部屋の隅まで、声はシンと響いた。私は手に力が入らなくなってマッサージを止める。それは一体どういう意味だろう。耳から音が遠くなる。目から色が薄くなる。指先から身体が凍っていくみたいだった。ナース達はみんな怖がっている。誰か死んだらどうしよう。親父だって万全の状態じゃないのに、限界がきたらどうするんだろう。その時ナースは傍にいない。誰かが怪我をしても手当ては出来ない。みんなエースを助ける為に無茶をするだろう。傷付くことも厭わないで突っ込んでいくだろう。それが堪らなく怖いのだ。

マルコの背中を見つめる。今のマルコに好きだと言ったら、マルコは何て言うのかな。困るかな。困るよね。だけど厭だよ、死なないでよ。生きて帰って来て欲しいよ。だけどそのどの言葉も、覚悟を決めたマルコに掛ける言葉じゃなかった。

今この部屋は辛い。もう出ようと立ち上がる。マルコは振り返りもせず何も言わなかった。悲しくなったけど仕方ないのだと言い聞かせて、震える手でドアに手を掛けた。


「だから」


ドアを開ける寸前、マルコの声が聞こえた。耳に音が、目に色が戻る。弾けるように振り返ったらベッドに腰掛けたままのマルコがいた。光を宿した双眸が私を映して、唇をゆっくり開く。


「結婚してくれ」















涙が溢れて私はその場に座り込んだ。マルコが近付いて来て私を抱き寄せる。強い心臓の鼓動に少し笑った。どちらからともなく自然に重なった唇は震えて、海の味がした。





(100223/カチ子さんへ!)
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