「何だか外、人多いね」
「知らねーのうみ。今日祭りなんだぜ」
「成る程…それでこの人混みなのか」
「なーうみ、俺らも祭りいこうぜ。腹減ったし」
「バネ一人でいきなよ。私人混み苦手だし」
「えー、行こうぜ!」
「やだ。どうせはぐれて終わりだって」
「それはないな。ずっと手繋いでればいいし、繋いでなくても俺がお前見失うとかあり得ないしよ。どんだけ人が一杯いたって、お前がどこにいるかならすぐ解るぜ?」

(またコイツは恥ずかしい事をさらりという…)

「…あほ」
「ん?何だ?」
「りんご飴」
「?」
「林檎飴、赤色の大きいやつ買ってくれるならいってもいいよ」
「おう!」
「あと…迷子はごめんだから、手、繋いどいてよ」




結局絶賛夏祭り中の海辺に来た。
いつもサエたちと遊ぶ浜と違って溢れるような人の波に押しつぶされそうになるけれど、自分が言い出したとはいえバネの大きな手がしっかり自分の手と繋がってて安心した。
でもバネが気遣えるというわけではなく、ぐいぐい進む背中を砂に足がとられながらも必死に追えばすれ違いざまに甚平姿のヤンキーと肩がぶつかった。


「おい、どこみて歩いてんだよ!」
「あ…ごめんなさい」
「ちっ…」


今度はわざとぶつかって立ち去ったヤンキーに、足が止まった私に気づいたバネがヤンキーを引き留めようと声をかけた。


「おい、ちょっとそれはねーんじゃないの?」
「…バネ、もう行こうよ」
「あいつ、うみにわざと…」
「いこう、春風」
「…え…ああ」


今度は私がバネの手を引いて歩き出す。
露店のおじさんのや家族連れ、カップルなんかの声をBGMに砂浜をしばらく進めば祭りの人混みから少し外れると、バネの方へ振り返る。


「いつまで固まってんの」
「だって名前…」
「そんなに驚く様なこと?」
「そりゃあ初めてだし」
「そうだっけ」
「おう。でも、あいつうみに謝ってないだろ?」
「……はやくデートしたかったんだよ」
「!」
「林檎飴食べたいしね」


素直に「ありがとう」とは言えず、照れ隠しに顔を屋台のほうに向ける。繋いだままの手をぎゅっと握れば、バネが笑ったような気がした。
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