気温39度、
いつも通り灼熱の太陽が照りつける。

夏島、夏生まれだけど暑いのは得意じゃない。島のそこら中に生える向日葵だって観光客はこぞってここのはピカイチ美しいとか言うけど、雑草にしか思えないほど好きじゃない。

でも今この瞬間、
全部を決定的に嫌いになった。


「今日、立つ事になった」



この人がその雑草レベルの向日葵を、
しかも決別の花束としてくれたから。




「ああ、そうなんだ。ていうかもう少しましな花無かったの?」


「綺麗な花はこの島にこれしか無いだろ」



皮肉だと、
胸のうちで舌打ちひとつ。

それって結局半々じゃないかと言われるかもしれないけど、それじゃ片付かないくらいこの気持ちは50/50なんてもんじゃなく、嬉しい100、憎らしい100だ。

いつでも来てくれた君が遂に行ってしまうなんて、衝撃に手が震える。でも私は、思いを腐らせてきた分だけ大人しくはしてやらない女だ。


「知ってると思うけど」


私サボが好きだよ。
平気でさらっと言ってやったけど、暑さにそぐわない涼しげな顔に見えるのがやっぱり憎らしい。困った様にも見えるけど、それは100嬉しいと愛でる顔だ。涼しげなのは置いていく覚悟のせいだろう。

連れてけと我儘を言ってみれば、ムリだろうの意味が篭った笑いを零して世界へ出る目的と覚悟を問われた。




「この島もこの暑さもうんざりなんだよ。その向日葵も大嫌い」


君のいない世界はつまらないんだ。
だから目的も覚悟も全部君の存在理由に託す。



「連れてかないと許さない」



気丈に気丈に。そう心がけたけど、強気に出てやったけどやっぱり駄目だった。震えそうになった喉がバレてやいないだろうか、こんな時に泣く女にはなりたくないんだけど。


少し間があった。サボは少し遠くを見て。
多分、水平線の向こう側を見ているんだろう。そして私を見ずに、ふと。自信に満ち溢れた表情で笑った。



「精一杯、平穏な日々へのチャンスをあげたつもりだけど。俺もこれ以上はね」



ナツがいない世界はつまらないから。
そう言って彼が振り返ると、
後は驚くほどに全てが駆け足だった。

出航寸前なんだと言う暴露にこうなることを予想した彼が見え隠れしていて。すると、飽きる程見慣れたあの花が突然大好きになってくる。手を繋いで飛び出したけど、自宅のテーブルに置き去りにした向日葵の花束を思い出して慌てて取りに戻った彼も勿論、世界で一番。




「やっぱり大好き」




手を引かれて、
小走りに抜ける故郷にさよなら。
私もう帰りません。



エンドレスサマー




【エンドレス】
終わりのない。





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