「東峰さん!僕と結婚してください!」
「常識的に考えておかしいッ!!!」
ばっちいいん、と思い切りひっぱたいてしまった。
誰をって?
「くっ…さすが東峰さん、なんて愛のこもったビンタ!」
「こもっているのは拒絶の心!」
我がクラスメイト、鳳長太郎くんだ。
「その愛を是非表現しきってください!さあ!」
「いやあああ来ないでえええ!!」
彼が全力で追いかけてくる。
私は死ぬ気で駆け抜ける。
この逃走劇の発端は、つい一週間前だ。
「鳳くん、消しゴム忘れたの?」
「は、はい…そうみたいです」
その日はテストだった。
鳳くんと席が隣である私は、そんな会話を交わす。
「じゃあ私の消しゴム貸すよ。二個あるし」
ただの善意だった。
テスト当日に消しゴム無しなんて、つらいだろうから。
しかしそれが全てを変えた。
鳳くん曰く、その時私に惚れたらしく。
先程のように付きまとってくるようになったのだ。
まっっったく理解できない。
一度優しくされたからって、普通惚れないだろう。
「私は常識的な人が好きなんです!勘弁してください!」
「知ってますよ東峰さん!あなたの好みなんて熟知してます!リサーチ済みなんですよ!」
「だから常識的に考えてそれおかしいだろがあああ!!!」
逃げていた足を止め、鳳くんに再びビンタ。
「さすが東峰さん!愛が痛い!」
「鳳くんの愛は重い!」
いつしか変態じみてきた鳳くん。
誰か、誰か止めてください。