国語の教科書に掲載されている物語で、感動することが結構あった。
戦争の話であったり故人の思いであったり、多様ではあったが。
そんな話を跡部くんにしてみると、彼は笑って、「お前の詩は俺にとっての教科書だ」と言う。
嬉しいけど、ちょっとだけ恥ずかしい。


新聞配達をして結構になる。
この生活リズムが身に染みていて、もう普通には戻れない、そんな感じがする。

「よう、能勢川」
「おはよう、跡部くん」

跡部くんに挨拶をしないと一日が始まらない。


「おはよー能勢川ー!!」
「おはよう、芥川くん」

クラスの近い芥川くんにもご挨拶。


「よ、能勢川。元気か?」
「ありがとう、元気だよ。宍戸くんは?」

気さくな宍戸くんと、すれ違いに挨拶する。


ただ義務をこなすだけの生活はなくなって、いいことばかりだ。


帰り、本屋に寄った。
昔国語の教科書に出てた、好きな物語がないか探す。
前まで、こんなこと考えたことすらなかった。
こういう、感動を見つけることにはまってしまいそう。


…ふと、近くに、立海の制服が見えた。
こんなところにまで来る立海生さんなんて、丸井さんの他にいないのでは。
そう少し期待しながら、その制服の人を見る。

特徴的な赤髪ではなかった。
さらさらとした、きれいな黒髪。
少し、茶色に見えるかもしれない。

……ちょっぴり残念である。


気を取り直して、物語探しに戻る。
しかしずいぶん古い話なので、見つかった本は本当にわずかだった。
思わず肩を落とす。

「あなたが甘露飴さんか」

と、隣から、私のニックネーム呼びで声がかかった。
見れば、さっきの細目の立海生さん。
えっ、どういうこと?

「はじめまして」
「あっ、はいっ、はじめまして!」

挨拶されたので挨拶を返す。
な、なんだかすごく礼儀正しい人だな。
というか何故そのニックネームを…。

「何故ニックネームを知っているのかと考えている確率、96%」

大正解です。どうして分かるの。

「俺は柳蓮二。あなたのことは同じ部活の丸井から聞いている。癖毛、短いポニーテール、少し小柄」

合っているか?と首を傾げつつ立海生、もとい柳さんが言うので、慌てて頷く私。
また大正解です。

「今日は東京の総合的なデータを取りに来たのだが…偶然とは本当に突然だな、甘露飴さん」
「そ、そうですね…。」

私もこんなに立海の人とお話出来ると思ってなかったです。
…データを取るって、一体どんなデータだろう。
実地調査みたいなデータ?それとも、丸井さんと同じテニス部だから、東京のテニスについて?

「テニスについてだ」

ま、またばれた。何故。

「それにしても、ふむ。そうか、丸井が甘露飴さんを……理由は分からないでもないな……」
「?」

聞こえるようで聞こえない。
…もしかして、また丸井さん、私を変に紹介してしまったのかな。
は、八割は嘘ですよ!柳さん!
私の熱意が通じたか否か、柳さんは微笑んで言ってくれた。


「とにかく、あなたに会えて俺は嬉しいということだ」


優しげな彼と、しばらく本について話してから別れ、帰路を辿る。


丸井さんが私を紹介してくれてなかったら、こんなことは無かっただろう。
いろんな偶然に感動する毎日で、私は幸せ真っ只中です。



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