夏休み明けから数日。
みんなはまだ休み気分が抜けきっていないのか、ちょっとだらけがちである。
…私も若干、そんな感じです。
「能勢川」
「何ですか跡部くん」
「お前、本気でテニス部のマネージャーになる気はないか?」
「…ないですね……」
跡部くんはきびきびしてる。
きっと五月病とかにも無縁なんだろうな。
最近跡部くんがしきりに私をマネージャーに誘ってくる。
若干解せない。
「いつもいつも何故断る」
「いや、まあ……用事が色々ありまして……」
「用事?」
きょとんとする跡部くん。
「ふん。んなもん俺様がなんとかしてやるよ、あーん」
「それは助かるけど、迷惑掛けるわけには…」
話がなかなか進まない。
跡部くんは頭はいいし優しい人なんだけど、たまにスケールの違う話をし出すからびっくりする。
そういう問題じゃないのよ跡部くん。
「……ジローに聞いたが、お前、立海の丸井と知り合いなんだって?」
「え?う、うん」
急に話が変わった。
何だか、雰囲気も変わった。
「…それが、どうかしたの?」
「いや、その…なんだ。別にどうというわけじゃねーが」
ぷい、跡部くんはそっぽを向く。
「……すごかったか?」
「うん、てんさいてきみょうぎ。すごい器用なんだね、丸井さんって。」
「それだ」
「えっ」
ぎら、と跡部くんが私を睨んだ。
美人だから迫力あるなあ。
ちょっと怖い、かもしれない。
「天才的なのは何も丸井だけじゃねえ。たっぷり氷帝のテニスを見せてやろうじゃねーの、能勢川!」
だからマネージャーになれ!と高笑いする跡部くん。
楽しそう。
「……跡部くん」
「なんだ、能勢川。異論は認めねえぞ」
「別にマネージャーでなくても、見れるんじゃないかな…」
「……」
「…だめ?」
「……ふっ」
正論じゃねーの!と笑う跡部くんに、私は再びテニス部へ連れていかれた。