九州のお祭りはどんちゃんと親しみやすいけど、神奈川のお祭りはなんだかそういうタイプじゃない。
あえて言うなら賑やかながら大人しめのお祭りだ。
「さあ甘露飴さん、どこ回りたい?」
「えっと…じゃあヨーヨー釣りで」
「よし、俺の釣りテク見しちゃるきに」
「お前こないだの釣りの時カサゴしか釣れてなかっただろぃ」
丸井さんからの鋭いツッコミ。
ヨーヨーは得意じゃもん、とかわいらしい返しをする仁王さん。
結局ヨーヨーは各自一個しか取れなかった。
「次はベビーカステラじゃな」
「バッカ、菓子の前に飯食べとかねえと菓子の美味さ半減なんだよ」
互いに意見の異論は認めないらしい。
仲がいいのか悪いのか。
多分いいと思うけど。
「なあ、甘露飴さんも焼きそば食べたいよな?」
「騙されるんじゃなか、焼きそばの不味い屋台もある」
こっちに話を振るんですか。
というかハズレ屋台ってあるんですね…。
「私はなんというか、その」
じっ、と私を見つめる二人。
まあ私が気の利いた返答なんて出来るはずなく。
「それぞれが欲しいもの買いに行くというのはどうですか?」
なるほどと感心しているお二方を、私は何だか嬉しく感じた。
「柚子」
「はい?」
しばらく買い食いに専念していると、仁王さんに声をかけられる。
「ベビーカステラ食わんか?」
「…食べきれなかったんですか?」
「うん」
ならどうして一際大きいものを買ったんだろう。
丸井さんがりんご飴を買い終えて戻ってくる頃には、カステラは私の手に渡っていた。