私の日常は、幼稚舎の頃のそれに比べて大きく変わった。

まずスーパーに行く時間が遅れるようになった。
これはもっぱら授業が長引くせいだ。
お陰で何度揚げ物が売り切れていたことか。

次に新聞配達の充実感。
私は自分を美化するタイプではないから、新聞配達という労働をする自分を褒めることはない。
だから時たま誉めてくれる人物がいるというのは、なんとも嬉しい。
例えば宍戸くんとか、跡部くんとか。

あと、知り合いがすこぶる増えたこと。
芥川くん、跡部くん、九州のご兄妹、丸井さん。
色々驚かされたりもするけど、毎日が新鮮です。

夏休みもあと4日、また何か起こるんじゃないかと期待するようになった。
まあそんなわけもなく、夏休みは終わっていくんだろうけど。

…と、思い直していた矢先。

「甘露飴さん。今から祭り行こうぜ」

スーパーで会った丸井さんに、そんな風に誘われた。

「…え?」
「俺らの地元の祭り、今日だから」
「は、はあ」

そういう問題ではない。
いつも通り輝かしい笑顔の丸井さんに、そんなこと言えるはずもなく。

「な、焼きそば奢るからさ」
「ご一緒します!」

焼きそばタダなら行くしかない!


「丸井、そいつ誰なんじゃ」
「前に話してた甘露飴さん」
「ああ、あれか」

待ち合わせをしているという神奈川の公園に連れて行かれると、そこには白髪…いや、銀髪?の人が。
…うん、そりゃお友達も一緒ですよね。
ていうか私のこと甘露飴さんて紹介したんですか丸井さん。
そんな、まるで私自体が甘露飴みたいな。

「あ、甘露飴さん。こいつ同じ部活の仁王っての」
「仁王雅治じゃ、よろしくの」
「ど、どうも…能勢川です」

互いに挨拶すると、仁王さんがまじまじと私を見る。

「ふーん」
「?」

意図が読めなくて首を傾げれば、仁王さんは私の頭に手を添えた。

「おまんの名前は?」
「え、能勢川…」
「違う違う、下の方じゃ」
「あ…えっと、柚子です」
「柚子か」

さらに深く首を傾げると、ぐしゃぐしゃと頭を撫でつけられた。

「な、なんですかっ」
「…和むのぅ」

小さい仁王さんのその声は聞こえず、私は髪を整えた。
この人、跡部くん並みに横暴だ。

「ほら、行くぜ甘露飴さん」
「は、はい!」


今年二度目のお祭りにて、また新たな知り合いが出来ました。



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