夏休み半ば、いつものスーパーで珍しい組み合わせに出会った。

「ねー丸井くん!試合しようよー!」
「バカ、こっちは地獄の合宿帰りなんだぜジロくん」

赤髪さんと、芥川くん。
赤髪さんはいつものようにお菓子だと分かるが、芥川くんがいるのを見たのは初めて。
彼がメモ用紙を持っているのを見ると、どうやらおつかいで来たようだ。
それにしても、二人は知り合いだったのか。
なんだか仲良さげだし、邪魔者は退散しよう。
そう思って立ち去ろうとした、のだが。

「あ!能勢川だCー!能勢川ー!」
「聞こえましたから名前連呼しないでええ!」

芥川くんが大声で私を呼ぶので、仕方なく彼らのもとへ。
未だ叫ぼうとしていた芥川くんの口は、両手で塞いでおいた。

「あ、甘露飴の」
「どうも、赤髪さん…」

赤髪さんも私を覚えていたらしい。
隣で芥川くんが、何で知り合いなのと騒いでいる。

「甘露飴さんは能勢川ってナマエなの?」
「あ、はい、能勢川です」
「ふーん…。あ、俺は丸井ブン太ね」

ぶんた。
…かわいい名前だ。

「丸井さんは芥川くんの友達なんですか?」
「ん?ああ、まあそんなもんかな」
「能勢川!能勢川こそ丸井くんとどういうカンケーなの!?」

ばっ、と飛びついてきた芥川くん。
丸井さんがいるからか、いつもよりテンションが高い。

「お菓子交換したことがある関係だよ」
「それだけ?」
「それだけ」

なーんだ!よかった!と芥川くんは笑った。
何がよかったのかと聞けば、「能勢川の友達は俺だけだもん!」と、あらかわいい。
思わず頬が緩む。
とりあえず、頭を撫でておいた。
あれ?でも聞きようによっては、私には友達一人しかいなくていいってこと?

「ジロくんと仲いいの?甘露飴さん」
「いえ、標準的な友達です…って、甘露飴さん?」

え、私の名前教えたはず…。

「ああ、なんかあだ名っぽくていいだろぃ?」

輝かしい笑顔付きで言われたなら断れやしない。
そうですね、と力なく返事しておく。
苦笑いでいると、芥川くんがむくれていた。

「能勢川ばっか丸井くんと話してズルい」
「えー…」

そんな芥川くんに、丸井さんからウインク付きで一言。
というか、ウインクできるとか丸井さんすごい。

「すねるなよジロくん!疲れてるけど天才的妙技見せてやるから」
「ほんと!?やった!」

てんさいてきみょうぎ、何かは分からないけど芥川くんがいたく喜んでいるので、すごいものなんだろう。
それにしても、丸井さんのあの面倒見の良さ。
弟や妹でもいるんだろうか。


その後、私もてんさいてきみょうぎを見せてもらえることになり、二人について行く。
行き先は、教えられていない。



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