私は特に夏休みのスケジュールがなく、毎朝配達をして夕方買い出しに行って、そんな毎日を過ごしていた。
少なくとも充実はしてないし、満足もしていない。
だからといって、帰らない親に当たるのはみっともなさすぎだ。
両親のおかげで私は今日も生きていられるのだ。
わがままはいけない。
「…はあ」
鳴り響く目覚ましに起こされながら、私は新聞配達の準備を始めた。
ただ唯一良しと思える時間は、きっとこれだ。
「よう、能勢川」
跡部くんとの会話。
俺様だけど根が優しいため、話しやすい。
「今日も配達か?」
頷く。
「そうか」
頷いて跡部くんに新聞を渡す。
跡部くんが首を傾げた。
「何で今日は一言も喋らないんだ?」
「え?」
うそ、喋ってなかった?
ばんばん喋ってるつもりだったのに。
「気分が悪いならここで休憩でも…」
「!!?」
盛大に首を振った。
こんな宮殿、豪華すぎて心臓に悪い。
「…そうか」
少し残念そうな跡部くん。
その考えが汲み取れず、今度は私が首を傾げた。
そんな私を見た途端に跡部くんが私を早く行くよう急かす。
「…心配しただけだ。悪いか」
ボソッと呟いた彼の言葉に、なんだか心があったまった。
跡部くんは少し赤くなっている。
きっと照れ屋さんなのだ。