夏休み突入。
がしかし、その序盤にして心が折れそうな状況に。

「…母さん父さん、両方とも休暇がとれない…」

かくして、私のひと夏の夢は見事に打ち破られた。

鬱になりながら、ひたすら宿題を進める私。
こうなったら勉強ばっかりしてやる。
甘露飴を頬張りながら気付く。
摂取していた糖分、甘露飴がまたも切れたのだ。
熱中症対策の帽子を被って、私はスーパーに出かけた。


うおう。
またもや赤髪さん出現。
今回はジャージ姿だが、確かに赤髪さんだ。
ここのスーパーが気に入ったのかな。
彼はやっぱり洋モノを見ているので、私は横から甘露飴を取らせてもらう。
きちんと取らせていただいた、のだが。

何故か赤髪さんが私の腕をがっちりと掴んでいた。

「なあ」
「は、はいっ?」

しまった、声が裏返った。
しかし赤髪さんはそんなこと気にもせず、私の手元を見つめる。
正確にいうと、持っている甘露飴を。

「それ、美味いの?」
「え、まあ…私にとっては美味しいです」

彼はこの美味しい飴を食べたことがないのか。
まあ最近のちびっこたちは甘めのものが好きなので、甘露飴をあげたら渋ることもある。
わざわざ美味しいか聞くということは、この人もちびっこ味覚かな。
糖分すごそうな洋菓子見てるし。

「俺そんなん食べたことねー」
「あ、食べてみます?買った後、少し差し上げます」
「マジ?じゃ、俺の買うガムと交換な」

そう言って、赤髪さんはガムを手に取った。
その後二人でレジに向かい、それぞれのものを買う。
そしてスーパーを出れば、瞳を輝かせて見つめてくる赤髪さん。
私は頬を緩ませながら、赤髪さんに甘露飴を差し出した。
彼のかわいさは、なんとなく芥川くんに似ている気がする。

「サンキュー!ん、これ」

赤髪さんは早速飴を口に含み、ガム数枚をくれた。
私も早速ガムを噛み始める。
青りんご味だ。
二人して黙々と食していると、段々と赤髪さんの顔が険しくなってきた。
…あ、美味しくないんだ…。
私の視線に気づいたのか、赤髪さんは慌てて弁解を述べる。

「い、いや、不味いとかじゃなくてさ、甘党として求めてるものと違うっつーか」
「いいんですよ、確かにちょっと甘みは少ないですから…」

やっぱり甘党の方とは好みが分かれてしまうのか。
私はこのガム、好きだけどなあ。
なんて考えていると、赤髪さんがずいぶん肩を落としていた。

「ど、どうしたんですか」
「小学生に気を使わせる日が来るなんてよ…」

おおう。
赤髪さんは私を小学生だと思っているのか。
カルチャーショックだ。

「あ、あの…中学生…なんですけど…」
「え、マジで?」
「マジで」
「…すいませんでした」

頭を下げる赤髪さん。
私は慌てて顔を上げてもらう。

「大丈夫です、間違えられ慣れてるので!屁でもないです!」

あれ、自分で言ってて悲しくなってきた。


その後はお詫びだと赤髪さんのくれたガム一箱を消費しながら、家路を辿る。
あ、名前聞き忘れた。



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