やっと梅雨からおさらばだ。
暑いのは嫌いだが、7月は夏休みが始まるから好き。
明日の終業式が終われば、もう夏休み突入だ。
思い返せば、幼稚舎の頃とは比べものにならないほど濃い日々だった。
「んー…」
ぐいいと体を伸ばし、夏休みのことを考える。
両親は帰ってくるのかとか、宿題はいつやろうとか。
両親が帰ってくるなら、宿題は早めに終わらせたい。
宿題のせいで家族の時間が減るなんて嫌だ。
細かく予定を決めていると、教室にはもう誰もいなかった。
時計を見ればもう4時30分。集中しすぎた。
鍵当番の人も帰ってしまったようなので、私が戸締まりせねば。
がらがらと戸締まりを終わらせれば、私に声をかける人物が。
「能勢川ーおはよー」
「おはようの時間は過ぎてるよ芥川くん」
「んー、そーなのー?」
実は隣のクラスだった芥川くんだ。
だけど元気はつらつな方でなく、眠たげな方。
おそらく先程まで寝ていたのだろう。
「何やってんのー」
「戸締まりだよ」
「戸締まりー?」
あくびをしながら首を傾げる彼は、非常にかわいらしかった。
つい頬が緩む。
そんな私を見て、芥川くんも笑う。
「へへ、能勢川って笑うとかわEねー」
ギャッ。
かわいい人にかわいいって言われた。
真実味がないぞ芥川くん。
「…かわいくは、ないと思う…」
「えー?かわEよー」
…寝ぼけてるのか?
「芥川くん、睡眠取りすぎないようにね」
「急になにー?」
「芥川くんが睡眠欲しか出してない気がして」
さて、夏休みが始まったら何しようかな。
校門まで芥川くんと帰る最中、そんなことばかり考えていた。
途中、ぱっちり目の覚めた芥川くんに「話聞いて!」とふてくされられたのは致し方ない。