「へー、大変だったね〜」
「はは…」
何故芥川くんが私の話を聞いているのか。
それは、数十分前のことである。
跡部くんに衝撃のお叱りをかまして、教室を出た私。
バッグを抱え、急に飛び出したのだ。
今更教室に戻るなんて恥ずかしすぎる。
校庭で唸っていると、あっという間に一時限目終了のチャイム。
私は授業をボイコットしてしまったのだ。
どうしようともたれた木の幹の反対側に、芥川くんがいたという過程を経て、今に至る。
ちなみに彼は、昼寝をしていたらこんな時間になっていたらしい。
とんだお寝坊さんだ。
「ぷぷ、跡部にめっ!だって〜」
芥川くんは口に手を当て、笑いを堪えている。
かくいう私は、奇声を上げてしまいそうなくらい恥ずかしい。
「能勢川、顔真っ赤だC」
「だって恥ずかしいから」
そう言って、笑う彼から視線を逸らした。
今現在の赤面度の八割は芥川くんの所為だ。
「芥川くん…私は跡部くんになんて言えばいいと思う?」
「何も言わなくてEと思うよ〜、元々跡部が悪いんでしょ?」
「そうなの…かな」
「うん」
あ、なんか、すっきりした。
誰かに話すって、こんないい事だったのか。
「聞いてくれてありがとう、芥川くん」
素直にお礼を言えば、芥川くんはぱっと笑った。
「別にEーよ!だって友達だC!」
ともだち。
芥川くんと私って、友達なのか。
それは何とも、心強い。
嬉しくてつい、彼の髪を撫でる。
「なに〜?」
彼はきゃっきゃと笑いながら私の手を受け入れた。
私はその後、出来たばかりの友人と一緒に校舎に戻った。