幼稚舎のお遊戯会では、宍戸くんがよく私を誘ってくれたっけ。
そんな風に絡んでいても顔見知り程度なのは、彼に私より仲のいい子がいたからだろう。
それも二人も。
私は仲良さげに遊ぶ彼らが、少なからず羨ましかった。
何が言いたいのかというと、宍戸くんは私を二の次の存在だと認識しているということ。
…だからこそ。
「能勢川!あの新聞のことなんだけどよ!」
こうやって稀に構ってくれるから、私は彼と顔見知りでいたいのだ。
友達なら、こんな些細なことで喜べまい。
「し、宍戸くん、声大きいよ」
「ん?悪ぃな」
宍戸くんは特に悪びれず、あの詩の新聞を広げた。
彼は行動派だと思う。
「これ、お前のことなんだろ」
素敵な笑顔で、そう言う宍戸くん。
「うん、そうらしいよ」
「もっと喜べよ」
「…複雑な心境なんだ」
「?」
宍戸くんは眉間に皺を寄せてこちらを見る。
はは、と苦笑いする私の頭を、彼はぽんぽんと叩いた。
…いや、撫でた?いややっぱり叩いたか。
当の本人はいつの間にか笑顔に戻っており、私を叩き続ける。
「頑張ってたもんなあ。よかったじゃねえか」
「……うん、よかった」
思わぬトラブルの種も蒔かれてしまったが、こうして宍戸くんが褒めてくれた。
頑張ったなと言ってくれる彼を、是非兄貴と呼びたい。
恨めしく思ったりしたが、宍戸の兄貴と話せたとなればグッジョブ新聞社。
これからも顔見知りポジションでいられますように。