翌日も、いつものように新聞配達をしていた。
いつもと違っていたのは、跡部くん宅のポストの前に跡部くんが立っていたこと。

「よう、氷帝生」
「…ど、どうも」

予 想 外。
まさか待ち伏せているとは。
してやられた。
こうなったらシラを切ろうと、ポストに新聞を入れようとするが、跡部くんがどかない。

「…あのー、新聞を入れたいんですが」
「お前があの詩の人物だろ?」

シラを切るどころか話を聞いてくれません。なんてこった。

「…人違いですよ」
「いいや、お前だ。俺様の目は誤魔化せねえ」

跡部くんは目がいいらしい。

「わざわざ朝の時間を小遣い稼ぎに割く奴はそういないしな」

それもそうだ。
私は観念するほか道がなく、正直に「はい」と答えた。

「初めから素直にそう言えばいいんだよ」

だってあなたが照れるような評価をするから。

跡部くんは私の手から新聞を取り、その場で開く。

「…今日はあの詩は載ってないのか」
「あ、私が控えて欲しいって言ったから…」

そう説明すると、途端に不機嫌になる跡部くん。何故だ。

「何で控えさせるんだよ」
「え、えー…」
「撤回しておけ、俺様の興味を削ぐ気か」

なんという俺様跡部様。
あまりの上からの物言いに、彼は年上なんじゃないのかと感じ始めた。
しかし私を謳った詩を気に入ってくれているということなんだと思われる。
なんだか気恥ずかしい。

「おい、氷帝生」
「え、あ、何でしょう」

あれ、同学年の筈なのに敬語になってるぞ。
頑張れ私、負けるな私。

「名前を教えろ」
「へ」
「名前だ名前。それくらい分かるだろう?」

若干馬鹿にされている気もしたけど、これが彼のデフォルトなんだと思う。
ならば気にするまい、質問に答えよう。
「能勢川です、能勢川柚子」
「能勢川か。覚えておく」

覚 え ら れ た。
イコール目を付けました発言か。
私は不安を感じながら、跡部くん宅を後にした。


…ん?
そういえば、宍戸くんは私が新聞配達をしてると知っていたっけ。
あの詩、読んでしまったんだろうか。



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